MAC DEMARCO『Salad Days』(Captured Tracks)

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 デビューEPに裸のピンナップとキスマークを添えて、バイセクシャルなイメージを打ち出した彼。どうしたって奇行のイメージばかり取沙汰される。スイートで眠気を誘う声。「最低の人間として生きたい」とガーディアンのインタヴューで語る。しかしそれは、ジョナサン・リッチマンをヒーローに挙げる彼の本質から、我々の目を背けさせるための一流の"手"だ。


 マック・デマルコの作曲能力は高く評価されている。だが優れたソングライターに限って、真実を見すえ過ぎて早逝する。同インタヴューで彼はこうも語る。「僕のポリシーは、物事を深刻に受け止めすぎないこと。僕はお気楽な人間、最も個人的な曲を書いたって、完璧にシリアスになんてなりっこない。ちょっくら舌を出してるのさ」。シンプルなアコースティック・タッチのギター・サウンドからは、匂い立つような色気とおどけ、そして哀愁が漏れ聴こえる。トリップを誘うサイケ感からはドラッグ疑惑も出るかもしれない。実際に母親にそう疑われた彼はすぐに電話して、「クスリなんかやってない! 俺は大丈夫だよ」と伝えたという。彼はクスリなんかやらなくたって裸なのだ。矛盾だらけの世界で正気を保つための、ごく自然な営みであるし、ジョージ・マイケルみたいに「外に出よう(Outside)」と言い出さない限りは大丈夫だ(もちろん私は彼もワム!の音楽も大好きだ)。


 ピッチフォークによれば、彼が5才の時、両親は離婚した。彼の母はいう、父は魅力的だがアルコール依存の傾向があったと。今でも年に数度会うが、父は彼のパフォーマンスを観ない。スティーリー・ダンの影響を感じさせる収録曲「Chamber of Reflection」のテーマは一種のセラピーだという。曲名は「音の反響を録音するための部屋」とも訳せるし、「内省のための部屋」ともとれる。2013年秋に故郷カナダのモントリオールからアメリカはニューヨーク、ブルックリンへ移住、10年来の恋人キエラと暮らす小さな部屋、そこで楽器演奏含め、本作の全てを録音した。それは同時に、彼の23年の人生を振り返り、過去から未来へ踏み出そうとする試みだったという。『青春の日々(Salad days)』というタイトルからも、自分のキャリアを俯瞰し、遠い何年か先を見すえる意思を感じる。ピッチフォークの記事に題されたように、彼はいまだ「大人になろうとしている少年(Mannish Boy)」、発展途上であり、可能性を秘めている。



(森豊和)

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