LOVE CULT TAKE DRUSS『Yr Problems』(Trensmat)

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 最近、バンドキャンプやサウンドクラウドでディグっていると、とりあえず "インダストリアル" とタグをつけておけば誰か聴いてくれるだろうみたいな作品に遭遇することが多い。まあ、それは "インダストリアル" という言葉が広まり定着した証左でもあるから、素直に嬉しいと感じつつ、どこか興ざめする気持ちを抱いていたのも事実それでも掘りつづけていたところに、本作が届いた! 言っておくと本作は決して明るいアルバムではないし、お世辞にも万人受けする音でもない。しかし、『Yr Problems』が蠱惑的な雰囲気で聴き手を惹きつける作品なのは確かで、ゆえに筆者も本作の底なし沼にズブズブとハマってしまった。日常の時間軸がねじれていくような感覚と共に・・・。


 本作は、ロシア連邦に属するカレリア共和国を拠点に活動しているラヴ・カルトと、サイケデリックなドローン・サウンドを特徴とするバンド、Gnod("ナード"と読むそうです)のメンバーであるドラスが組んで制作したアルバム。彼らが本作で披露しているのは、瞑想的なドローンとジ・オーブに通じるヴォイス・サンプリングの使い方、さらにインダストリアルの要素もちらつくサウンド。ラヴ・カルトが2曲、ドラスが2曲、そして共作が4曲という内容ではあるものの、アルバムの流れはしっかり統一されており、終始ダークなサウンドスケープが貫かれている。空間を活かしたプロダクションは非常にミニマルで、分かりやすい転調もない。それゆえキャッチーとは言えないが、執拗な反復によって生まれる中毒性はドラッギーな領域にまで高められ、奇怪な空気を醸し出すという点においてはエイフェックス・ツインの『drukqs』と比肩する。


 リリース元の《Trensmat》は、ノイズやドローン作品をリリースしてきたレーベルということもあり、本作にはそんなレーベルカラーに沿う側面もある。だが「Death Forever」ではジュークのビートを持ち入るなど、ビートやリズムの面でもチャレンジングな姿勢を覗かせる。ひとつひとつの音はチープでシンプルの極地にありながらも、それらの組み合わせでディープなグルーヴを生みだす手法は18+ジャック・ダイスなどのユニットに通じ、それは「Nothing Makes It Real」といった曲で顕著に表れている。言ってしまえば本作は、ドローンやノイズの文脈に、《Modern Love》や《Blackest Ever Black》周辺によるここ数年のインダストリアル・サウンド、それからジューク以降のベース・ミュージックを流し込んだ歪で実験精神あふれる作品だ。ジャケットはオシャレなハウス・ミュージックのコンピレーションに見えるが、始めは処女の如く後は脱兎の如し、見た目に騙されてはいけない。



(近藤真弥)

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