D. EDWARDS『Teenage Tapes』(The Death Of Rave)

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 D.エドワーズことデルロイ・エドワーズによる『Teenage Tapes』、実に中毒性の高いアルバムだが、同時にすごく厄介でもある。というのも、筆者自身こんな作品にお金を出して良かったのだろうかと思っているからだ。お世辞にも音が良いとは言いがたく、ハイレゾで聴くような作品でもない。パソコンに備えつけられたスピーカー、あるいは100円ショップで売られているしょぼいイヤホンで聴いたときの、あのヘナヘナとした薄っぺらい音。そんな音で埋め尽くされた作品が商品として世に放たれ、それを享受してしまっていいのかという葛藤を筆者は抱えている。


 とはいえ、そこにスロッビング・グリッスルが《Industrial Records》を立ち上げる際に掲げたスローガン、「Industrial Music For Industrial People(産業的な人々に向けた産業音楽)」と類似する精神を見いだしほくそ笑んでしまうあたり、筆者は本作の虜になっているのだと思う。


 これまでにエドワーズは、ロン・モレリと共に設立した《L.I.E.S.》、さらに自身が主宰する《L.A. Club Resource》などからシングルをコンスタントにリリースしていたが、意外にもアルバムというフォーマットは本作が初。だから筆者も、いつも以上に楽しみな気持ちを抱きながら再生してみたが、ビックリするほど変わっていない。もちろん収録曲はすべて「Untitled」(エドワーズは "Untitled" のままリリースすることが多い)。言ってしまえば拍子抜け。それでもインダストリアル、ノイズ、ドローン、ハウスをドロドロになるまで混ぜ合わせたサウンドの妖艶な魅力に取り憑かれ、愛聴盤となっている。


 それにしても、家で聴くとインダストリアルを基調とした実験的なドローン・サウンドに聞こえるのに、クラブで流れると心を飛ばすトリッピーなサウンドになってしまうのだから不思議。特に6曲目は、ドラッギーなアシッド・サウンドに仕上がっているせいか、フロアで鳴り響くと秘めた爆発力を発揮する。拳を振りあげ絶叫の嵐、とはさすがにいかないが、それまでバラバラに揺れていたクラウドが一斉にグルーヴを共有したかのように体をくねらせるのだ。これはおそらく、先日エドワーズがDJパニッシャー名義でリリースした「Untitled」な(こちらもタイトルがつけられていない)EPを聴いてもわかるように、もともと彼がフロア仕様のトラックを作る才能に恵まれているからだろう。こうした側面に焦点を絞ったアルバムも聴いてみたい。



(近藤真弥)


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