RAINER VEIL「New Brutalism」(Modern Love)

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Rainer Veil「New Brutalism」.jpeg

 チルウェイヴは過剰なリヴァーブで埋め尽くされたサウンドスケープを描き、《Telefuture》などを中心とした80'sエレ・ポップ色が強いシンセウェイヴの潮流は、ソニーのビデオデッキの名を掲げたベータマックスがそうだったように、人が持つノスタルジックな感情を抽出しそれをロマンティックなディスコに変換した。


 一方で、ロマンティシズムを排除していったのが、昨今のインダストリアル・ブームだ。アンディー・ストット『Luxury Problems』などはロマンとリアリズムが入り雑じっていたものの、このアルバム以降に生まれたインダストリアルと呼ばれる作品のほとんどは、無機質でリアリスティックな方向性を見せてきた。パーク『The Power And The Glory』のように、現実世界に対する明確なリアクションを示すインダストリアル作品も生まれるなど、現実を反映する度合いは徐々に高まっている。


 そんななか、ライナー・ヴェールの「New Brutalism」というEPが世に解き放たれた。既にお気づきかもしれないが、タイトルは1950年代に現れた建築形式ニュー・ブルータリズム(New Brutalism)が元ネタである。この形式には、素材をできる限りそのまま生かそうという理念があり、荒々しい自然さを残そうと試みた潮流だ。いわば、テクノロジーの発展により、私たちが望めばどこまでも "洗練" を極めることができる現代とは真逆に位置すると言え、そうしたニュー・ブルータリズムをEPのタイトルに掲げるあたり、現代に対するライナー・ヴェールなりの反抗心が窺えるようで興味深い。


 《Modern Love》からのリリースということもあり、おそらく"インダストリアル"として捉える者もいそうだが、それだけではない多くの要素で本作は彩られている。シンプルなビートの上に乗るサウンドは、cv313やディープコードといった《Echospace》周辺のダブ・テクノを感じさせ、さらに音像で訴求力を獲得しようと試みていることからもわかるように、アンビエントの要素も色濃く滲んでいる。とはいえ、低音の鳴らし方はベース・ミュージックそのもので、最近レコード・ショップでよく見かけるフレーズを使って表せば、「New Brutalism」の音楽は "アンビエント・ベース" になるだろうか。そういった意味で本作は、インダストリアルという音楽を拡張する作品だと言える。



(近藤真弥)



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