ローレル・ヘイロー

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LAUREL HALO


私が初めてやった音楽の作業は

サンプリングではなくて、合成(シンセシス)なの


2014年1月31日~2月3日にかけて開催されたハイパーダブ10(Hyperdub 10)。このイベントは、興味深い作品を数多くリリースし、ダンス・ミュージック・シーンで輝きつづけるレーベル、ハイパーダブの設立10周年を記念しておこなわれたものだ。


主宰者のコード9、それからアイコニカ、ローレル・ヘイロー、DJラシャドというハイパーダブから作品を発表しているアーティストらが、東京、名古屋、金沢、大阪の全4都市をまわった。


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photo by Masanori Naruse


 筆者はそのうちのひとつ、代官山ユニットにおける東京公演を観る機会に恵まれた。この日は先の4アーティストの他に、D.J.Fulltono(フルトノ)やQuarta 330(クアルタ330)といった日本のDJ/トラック・メイカーも出演し、週末の夜を盛り上げてくれた。


 そして嬉しいことに、その夜を盛り上げた出演者のひとり、ローレル・ヘイローに話を訊くチャンスも得た。彼女自身、今回のジャパン・ツアーを楽しんだようだ。


「このツアーは、夜が深まるにつれて徐々に盛り上がりを増していったから、とても上手くいったと思う。各アーティストのセット、雰囲気、ヴァイブスが、全体を構成する部分としてそれぞれうまく機能していた。他のアーティストと一緒にプレイするのはとても楽しかったわ。彼らの作曲やパフォーマンスに対するさまざまなアプローチには、インスピレーションを受ける」


 ちなみに彼女のライヴは、コラージュ的かつ実験的なエレクトロニックで始まりながらも、中盤あたりからは4つ打ちを基本とするアッパーな展開に持っていくというものだった。筆者の経験から言うと、ドイツの有名クラブ、ベルゲハイン(Berghain)で聴けるような、ハードで硬質なサウンドがライヴの中盤以降に多く聴けた。


 さらに彼女のライヴには、フランスの作曲家ピエール・シェフェールによって生み出されたミュージック・コンクレートの要素が色濃く出ているように思えた。最新作『Chance Of Rain』でも窺えた要素ではあったものの、それがライヴではより明確に表れていたと思う。この筆者の"勘"についても、彼女は答えてくれた。


「もちろんあるわ。ベルナール・パルメジャーニが最近亡くなったことは残念に思う。私が初めてやった音楽の作業はサンプリングではなくて、合成(シンセシス)なの。でも、合成よりもサンプリングの方がポテンシャルがあると思って、サンプリングを追求する方が自分にとっていいと考えた」


 ベルナール・パルメジャーニといえば、『Chronos』や『Chants Magnetiques』といった電子音楽の名盤をいくつも作り上げた作曲家として知られ、彼女も話しているように、2013年11月に惜しくも亡くなってしまった。パルメジャーニは、ピエール・シェフェールが設立したフランス音楽研究グループにも参加しており、そういった意味で、ミュージック・コンクレートの影響下にある彼女がパルメジャーニの名を出すのは不思議ではない。


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photo by Masanori Naruse


 また、彼女の音楽的嗜好はとても幅広く、最近は「ブラック・ジャズというレーベルのリイシューものをたくさん聴いてるわ。あと、20世紀初期の合唱音楽、ダブやレゲエもいろいろ。それからドナルド・バードにアリス・コルトレーン、マス・プロド、ワイルド・オーツ(Wild Oats)やフューチャー・タイムズからのリリースもチェックしてる」ようだ。なるほど、10年代以降のテクノ/ハウス・シーンで注目を集めるワイルド・オーツやフューチャー・タイムズといったレーベルに執心する一方で、ジャズにも耳を傾ける。なんだかデリック・メイの好みと類似していて面白い。


 それにしても彼女、日本に滞在中は何をしていたのだろう? それがプライベートなテーマであるのは承知のうえで、筆者は図々しくも訊いてみた。


「とても短い滞在だったから、電車で他の都市へ移動したり、会場へ向かったり、サウンドチェックをしたり、ディナーへ行ったり、そしてまたクラブへ行ってライヴをやる、ということでほとんどの時間を過ごした」


 うーむ、観光をする時間はあまりなかったようだ。しかし面白いハプニングにも遭遇したようで、彼女は饒舌に話してくれた。


「でも、面白かったことがひとつあるわ。東京にいるとき、自由な時間が少しあったから散歩に出かけて、神社を見つけたから写真を撮ってたの。そしたら男の人が近寄ってきて、私に日本語で話しかけてきた。神社で写真を撮ったから怒られるのかな、と思ったんだけど、彼は「Marriage("結婚"や"婚礼"を意味する英語)」とつぶやき始め、自分を指差してから私を指差した。気づいたら、彼の顔は笑顔でいっぱいだった! だから、東京の神社で求愛されたこと以外、特別なことは無いわね!」


 まさか彼女も、この極東の島国まで来て求愛されるとは想像もしなかっただろう。たしかに彼女、クール・ビューティーという感じの魅力があるし、ライヴではそれがカッコよさとなっていた。あのカッコよさは、ぜひとも多くの人に観てほしい。彼女も「また近いうちに日本に戻って来られたらいいな。日本の文化は尊敬できる部分がたくさんあるし、もっとよく知りたい」と言っていたから、再来日のタイミングでぜひとも。


2014年2月

取材、文/近藤真弥



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ローレル・ヘイロー
『チャンス・オブ・レイン』
(Hyperdub / Beat)

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