PERC『The Power And The Glory』(Perc Trax)

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 ヴァチカン・シャドウは『Remember Your Black Day』でアメリカ同時多発テロをテーマにし、サミュエル・ケーリッジは『A Fallen Empire』のジャケットに第一次世界大戦の写真を使用するなど、ここ最近のインダストリアル・テクノには政治的側面を滲ませた作品が多い。もちろんそのなかに、ロンドン出身のパークによる『The Power And The Glory』も含まれるだろう。


 まず、5曲目の「David & George」。このタイトルにある名はそれぞれ、イギリスの首相デーヴィッド・キャメロン(David)と、同国の財務大臣ジョージ・オズボーン(George)を指しているそうだ。肝心の内容は、ノイジーかつ暴力的なサウンドと不気味な笑い声が響き渡るというもの。エリザベス2世とも遠縁にあたる上流階級出身のキャメロンに向けられた皮肉か? あるいは構造的財政赤字の解消を公約に掲げながら未だ実現できていないオズボーンをおちょくっているのか・・・。国民に多くの "痛み"と"負担" を求め、失業率上昇や賃金の減少を招いた暗黒のサッチャー時代と似たようなことが今のイギリスで起きている? なんて想像もしてしまう(キャメロンはサッチャーと同じく保守党)。


 さらに、アルバム・タイトルの『The Power And The Glory』。この暗喩的なタイトルは、作家グレアム・グリーンが1940年に上梓した小説と同名なのだ。1991年に亡くなるまで共産主義を貫いたグレアムは、『静かなアメリカ人』を書き上げたせいでアメリカに入国拒否されたりと、強い反骨精神を持ちつづけた男。本作は明確な政治的主張をおこなっているわけではないが、そう思わせる要素はいくつも散りばめられており、これまでリリースしてきた作品群と比べたら極めて"政治的"と言えるだろう。言ってしまえば本作は、インダストリアル・テクノにレベル・ミュージックとしての役割をあたえている。


 とはいえ、パークはダンス・ミュージックの快楽も忘れていない。中毒性の高いリズム・ワークが印象的な「Galloper」、それから初期のジェフ・ミルズに通じるハード・ミニマル「Dumpster」は、クラウドが踊り狂う光景を容易に想像できるトラックだ。


 こうした両義性を抱える本作は、政治とは距離を置きたい逃避願望が見え隠れしながらも、現実という名の圧倒的存在を無視できないことに対する失望が表出している。



(近藤真弥)

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