DROWNERS『Drowners』(French Kiss)

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 先ごろ自伝を発表したモリッシーは、2012年の来日公演でも凄まじくアグレッシヴでピースフルなパフォーマンスを見せてくれた。なんといっても親しみやすい人柄が伝わってくるのだ。演奏中しきりに客と握手したり、ステージに飛び込んできた客を抱擁したり、花束をフロアにばらまいたり、シャツを脱いで客に向かって投げたり、しまいには日の丸の旗を腰に巻いてザ・スミス時代の曲を熱唱したり。そりゃあ常に怒れるモリッシーかもしれないが、表現のそこかしこにユーモアや哀愁を感じた。一方で、ブレット・アンダーソンもスウェードとして2013年に来日。マイク・コードを振り回し観客ともみくちゃになりながら拳を振り上げ歌い続けていた。立ち居振る舞いの力強さといったら、まったく衰えを感じさせない。


 彼らが持つような無敵感(きっぱり言ってしまおう!)。それを背負うアーティストが近年少ない。せいぜい、ストロークスアークティック・モンキーズまでだったか。驚くような目新しさ、玄人受けする緻密な音楽性なんかこの際いらない。とにかく神がかり的な勢いがあるバンドにもっと出てきてほしい。それはロックンロールが担う重要な役割の一つだと思う。


 ドラウナーズはそんなモヤモヤした気分を吹き飛ばしてくれるアクトだ。ザ・ヴァクシーンズのサポートをおこない、テンプルズUSツアーを敢行する彼らは、英ウェールズ出身のマット・ヒット(ヴォーカル/ギター)率いるニューヨークの4人組。英ガーディアンによれば、マットはザ・スミスをオール・タイム・フェイヴァリットに挙げ、おまけにバンド名はスウェードのデビュー・シングルから引用している。演奏するのは飛びっきり疾走感のある2分ほどのジャングリー・ギター・ポップ。加えて、ハスキーでかつ深みや潤いのあるマットのヴォーカル、その色気といったら!


 シンプルな歌詞世界は恋愛に悩む思春期の少年そのもの。さらに「Long Hair」では少年も少女も髪を伸ばすと歌う。その純粋な混乱と憧れは「火星から来た屈折した星屑」(そう、グラム・ロック!)を思い起こさせるし、楽曲自体は、モリッシーが憧れたニューヨーク・ドールズなどの初期パンクに近いフィーリングだ。そういった意味では、自身のルーツを遡っているのだ。好きなバンド達のさらにルーツ。彼らの本能はそれがいま必要な音楽だと言っているのだろう。


 ドラウナーズが時代を席巻するかどうかなんて分からない。でも彼らのサウンドは30過ぎの私の胸だって熱くさせる。恥ずかしいくらいナイーヴで子どもじみた歌詞と演奏のテンションといったら、ザ・スミスやスウェードの後継者たるに十分すぎるだろう。



(森豊和)

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