DANA RUH『Naturally』(Underground Quality)

|
Dana Ruh『Naturally』.jpg

 "ハウス・ミュージック"といっても、実にさまざまなハウスがある。シカゴ・ハウス、アシッド・ハウス、ディープ・ハウス、テック・ハウス、ロウ・ハウスなどなど、他にもたくさん。こんな煩雑としたジャンル分けは筆者を含めた "メディア" のせいでもあるから、申し訳ないというかなんというか・・・。


 そんなジャンルについて "ここ最近のハウスは" みたいに語るとなれば大変だったりもするが、それでも言わせてもらえれば、ここ最近のハウスは本当に面白い。そのなかでも特筆したいのが、アメリカのハウス・シーンである。例えばニューヨークの《L.I.E.S.》は、《100%Silk》を旗頭に隆盛したテン年代インディー・ダンス以降の流れを受け継ぐレーベルのひとつとして、ハウスという枠にとらわれない音をカタログに揃えている。さらに《L.I.E.S.》主宰のロン・モレリは昨年、《Blackest Ever Black》や《Modern Love》などを中心としたインダストリアル・テクノ再評価の流れに共鳴する『Spit』を発表。このアルバムは《Hospital Productions》からのリリースだが、昨今のインダストリアル・ブームに接近する《L.I.E.S.》周辺の動きとしては重要だ。


 DJジャス・エド主宰の《Underground Quality》も、近年のUSハウスを語るうえでは欠かせない。2000年代半ばに始動したこのレーベルからは、ブラック・ジャズ・コンソーティアムやDJキューなど、ここ最近のUSハウスを担う重要なアーティストの作品がリリースされている。《Underground Quality》の特徴は、フランソワ・ケヴォーキアンやケリー・チャンドラーといった90年代のUSハウスに通じるサウンド。そういった意味ではUSハウスの歴史に連なる、いわば "正統派"と言えるだろう。だが、決して懐古的な音を鳴らしているわけではない。DJジャズ・エドはシュテフィーやロウレンスといったドイツ勢とも積極的に交流し、USハウスの "拡張" に挑んでいる。


 その "拡張" は、ダナ・ルーのファースト・アルバム『Naturally』がリリースされたことでさらに押し進められるはずだ。ドイツを拠点に活動する彼女は、《Ostgut Ton》や《Cocoon》からもリリース経験があり、ハウス界隈だけでなくテクノ界隈でも名が知られている。本作で彼女はUSハウスに接近しつつ、7曲目「Just Don't」ではデトロイト・テクノに通じる情緒的なパッド・サウンドを鳴らし、続く「D's Interrupt (Dub)」と「Dirty Egg」では《Ostgut Ton》周辺のテクノ・サウンドを披露したりと、高い音楽的彩度も窺わせる。


 また、本作を際立たせるメロディアスな側面も見逃せない。この側面は、ハウス・ミュージックに触れて間もない聴き手を惹きつけるのに十分な魅力を放っている。それこそ、ディスクロージャーがキッカケで初めてハウスを聴いた、なんて人も虜にするほど・・・。キック、ハイハット、スネアといったパーツを巧みに出し入れし、心地良いグルーヴを生み出す手腕もお見事。玄人リスナーも唸るサウンド・プロダクションは文字通り必聴だ



(近藤真弥)

retweet