reddam『Nighthawk Is Singing 1.2.3.4』(Sasakino Records)

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 シュエ・ジェンファンというデザイナーがいる。自身のブランド『Jenny Fax』を持つ彼女は、実の妹をファッション・ショーに登場させるなど、かなり個人的な表現をおこなってきた。その代表例は、ジェンファンが2011年にベルサール渋谷で開催した初の単独ショーである。このショーで彼女は、学生時代に見たクラスメイト、それからテレビのホーム・ドラマの世界観をデザインに取り入れていた。


 いくつかのインタヴューで彼女自身が述べているように、ジェンファンの服は "普通の人" のためにあるものだ。オシャレでもないが、芸にできるほどの大きなコンプレックスも抱えていない人。そうした人をジェンファンはファッションで輝かせようと試みる。


 OK?NO!!のメンバーであり、今年1月から吉田ヨウヘイgroupにも参加しているreddam(リダム)が生み出した本作『Nighthawk Is Singing 1.2.3.4』は、ジェンファンのデザインに宿る魔法と似た "ナニカ" を持つ。強いて "ナニカ" を具体的に言い表すなら、退屈で平凡だと思いがちな日常の彩度を高める魔法といったところか 。これは音楽が持つ魅力のひとつだが、その魅力に満ちた音をreddamは軽快に鳴らす。一度聴けば口ずさめるキャッチーなメロディーに、身近な景色に潜む面白さや楽しみを掬い上げるような歌詞。それはそれは何度も聴きたくなる良質なポップ・ソング。


 90年代をリアルタイムで過ごした世代は、本作に渋谷系の要素を見いだすかもしれない。しかし筆者はなんとなく、ジム・オルーク『The Visitor』の影響があるように感じた。本作の歌詞、作曲、演奏、レコーディング、アートワークにいたるまで、ほぼすべてreddamの手によるものだそうだが(4曲目はニルソン「Bath」のカヴァー)、『The Visitor』もほぼすべてジム・オルークの手によって制作されている。こうした共通点からジム・オルークの影響を見たのだ。とはいえ、『The Visitor』のアートワークにジムは関わっていないから、この点は本作のほうが勝っている。


 まあ、それはともかく、外部の手があまり加えられていないソロ・アルバムは内省的になりがちだ。ゆえに聴き手がコミットしづらい場合もある。しかし本作にそういった問題はない。確かにソロ・アルバム特有のパーソナルな空気を醸し出してはいる。だが、そういった作品が大勢の共感を呼ぶのは決して珍しくない。むしろ、個人的な思い入れを色濃く表現したほうが多くの人を惹きつけることだってある。それこそジェンファンのショーのように、そして本作のように。







(近藤真弥)



【編集部注】『Nighthawk is Singing 1.2.3.4』はこちらのページからダウンロードできます。

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