トリプルファイヤー『スキルアップ』(アクティブの会) 

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 "高田馬場のジョイ・ディヴィジョン"の異名を持つ若き純音楽集団トリプルファイヤー。彼らは柔軟なユーモアのセンスとルサンチマンを武器に、ザクザク心臓に切り込むビートを、殺伐とした歌詞や溌剌とした笑顔とともに四方八方に撒き散らす。プレス・リリースに「メンバーは皆性格が良く、友達が多い」とあり、さらに大森靖子ミツメ、スカート始め、彼らに好意を寄せるミュージシャンは多い」ともある。ういうスタンス、私は嫌いじゃない。


 「これ、本当に笑えますよ」。本作の録音エンジニアであるPANICSMILEのドラマー松石ゲルが、意味ありげな笑顔でCDRを渡してきたのは2013年秋のことだった。そのCDRには、本作のタイトル・トラックである「スキルアップ」のライヴ・ヴァージョンが収められていた。延々と繰り返すギター・リフが閉塞感を極限まで高めていった末に、爆発する歓声のようなヴォーカルの叫び。


 最初聴いたときは戸惑った。歌詞の意味もよく分からなかった。ヴォーカルには基本的にメロディーはない。かといってラップのようなリズムもない。ただの語りだ。その語りの内容と絶妙に展開するリズム隊が絡み合い、「魂の叫び」として我々の胸に迫ってくる。自然と体が反応する。踊れる。言葉の意味を理解できなかったとしても伝わる。そもそも言葉だけで通じるなら詩や小説でいいのだ。彼らは音楽という表現形式を選び取った。音楽でしか表現できないミラクルがこの銀盤には収められている。


 彼らの楽曲はじわじわ染み込んでいく。少しずつ笑みがこぼれてくる。何度となく聴くうちに松石ゲルの言葉の意味が分かってきた。最高に踊れるだけでなく最高に笑えるのだ。皮肉でも現実逃避でもない。この時代を生きる苦しみを乗り越えていくために必要な笑いだ。トリプルファイヤーの音楽は、みっともないくらいもがく自らの姿を映し出す鏡である。そんな自分を哀れみ正当化するのではない。客観的に可笑しみをこめて表現する。その風刺のセンスの凄さといったら、もうこれは天然だし本物だ。



(森豊和)

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