ORANGE JUICE『You Can't Hide Your Love Forever』(Domino / Hostess)

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 若き日の衝動もそのあげくの失敗も、青春は一度きりの刹那のきらめきだからこそ美しいのかもしれない。しかし、全く同じではないにせよ、年老いても同質の輝きを再現することはできる。むしろこれまでの経験を生かせば、より一層みごとに輝ける。


 2014年2月、オレンジ・ジュースの4枚のアルバムが《Domino》からリマスター再発された。フリッパーズ・ギターの二人によって90年代に日本盤CDとして再発され、10年代の今も再評価され続けている。オレンジ・ジュース、ひいてはその中心人物であるエドウィン・コリンズの音楽は、作られたハイプでも一過性のムーヴメントでもなかった。30年以上の歳月がそれを証明している。


 本作は記念すべきオレンジ・ジュースの1stアルバムである。一聴、さわやかなギター・ロックと思わせて、腰にくるリズム隊のグルーヴと、若さと老成が同居した奥行きのあるヴォーカルが耳に飛び込んでくる。パンク以降の感性でソウル・ミュージックやオールディーズのロックを再解釈した楽曲群、その歌詞は失恋について歌っているともとれるし、この世界の様々な矛盾に唾を吐く意思表明ともとれる。


 一方で、2013年に発表されたエドウィン・コリンズの新作『Understated』は、シンプルに削ぎ落された自然な躍動感に満ちていた。年輪を重ねた今の彼の姿が反映されている。しかし本質は変わっていない。1つのことを継続していくのは簡単なようで難しく、とても重要だ。真の意味で生きるとは、そういうことだと私は思う。


 遡ること2005年、エドウィン・コリンズは脳出血に倒れ、会話すらままならない危機的な状況に陥った。しかし、そこからリハビリを続け、右半身マヒは残っているものの、再びレコーディングができる状態にまで回復した。2011年には来日公演も果たし、機材ケースに座りながらではあるが、バンド時代からソロ曲まで満遍なく披露してくれた。ドラムスのジョナサン・ピアースとの共作曲「In Your Eyes」では息子のウィリアムとデュエット。息子を心配げに見守り、堂々と歌い上げるさまに安堵の表情を浮かべていた。「まあ、上出来だ」というような(笑)。そして代表曲の一つ、「A Girl Like You」では杖をついて立ち上がって熱唱、迫真のパフォーマンスだった! 


 わずか4分間、棒立ちで歌う彼の姿が今でも目に焼きついている。派手なパフォーマンスばかりが胸を打つのではない。その人がその人なりに自身の限界に挑み全力を尽くす姿、その誠実さにこそ人は感動するのだ。本作『You Can't Hide Your Love Forever』は彼の原点であり、現在に至るまでの彼の魅力、その全ての萌芽がある。



(森豊和)



【編集部注】『You Can't Hide Your Love Forever』リイシュー国内盤は3月5日リリース予定です。

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