MOODYMANN『Moodymann』(KDJ)

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 2013年12月3日、財政破綻したミシガン州デトロイト市に対し、同州の連邦破産裁判所は連邦破産法9条の適用を認めた。とはいえ、これで終わりというわけではない。デトロイト市の弁護人は、期限である3月1日までに再編計画を提出しなければいけないし、さらには破産法適用に反対してきた市職員や労働組合などが異議申し立てをすれば、新たな法廷争いも生じるだろう。言ってしまえば、先行き不透明。


 かつてデトロイトは、ゼネラル・モーターズ、フォード、クライスラーといった自動車産業を中心に工業都市として栄えた街だ。しかし、その自動車産業が衰退すると、企業に勤めていた人たちは大量に解雇され、大企業の下請け会社の多くが倒産に追い込まれた。これに伴い人口も減少し、そうなると所得税といった市の税収も減るのは必然。それでも公共サービスを縮小し、市民から税金をむしり取ることでなんとか債務返済をおこなってきたが、当然そうした "無理" を続ければ都市機能は崩壊してしまう。2013年7月18日、ミシガン州デトロイト市は連邦破産法9条を申請した。


 今年1月に本作『Moodymann』をリリースしたムーディーマンは、デトロイトを拠点に活動するDJ/プロデューサー。これまでに数多くの素晴らしいハウス・トラックを残し、1967年にデトロイトで起きた暴動(43人もの死者を出した "トゥエルフス・ストリート・ライオット" だと思われる)がテーマとなったアルバム『Det.riot '67』を発表したりと、メッセージ性を打ち出すことも多い。しかし本作は、そのメッセージ性があからさまではない。歯が獣のように鋭く、レミーマルタンを手にでっぷりとしたお腹を見せつける男が印象的なジャケットは暗喩とも取れる。それでもサウンドのほうはハッピーでファンキーなダンス・ミュージックとなっており、ハウスを基調にファンク、R&B、ディスコ、ソウルなどなど、実にさまざまな要素が混在し、ムーディーマンを知らない者も楽しめる間口の広さがある。LP版は全12曲入りだが、比較的手に入りやすいCD版はなんと全27曲入りで、しかもラナ・デル・レイ「Born To Die」のリミックスが収められていたりと、サービス精神も旺盛。おまけにセクシーでお水なノリも。まさにパーティー・アルバムと言える内容だ。


 また、本作に関してひとつ気になることがある。そもそも本作、昨年11月にリリースがアナウンスされたときは、『ABCD : The Album』というタイトルだった。同時に収録曲である「Come 2 Me」のMVも公開され、2013年発表のミニ・アルバム「ABCD」の続編的作品になると見られていた。この時点で、かなり具体的なリリース・プランがあったと思われる。そうしたなか、なぜあえて自身のアーティスト名をアルバム・タイトルにしたのか? 筆者は、この自らのアーティスト名を掲げるところに意味があると考える。そうすることで、本作の内容がケニー・ディクソンJr.(ムーディーマンの本名)としての姿勢を示すものであると聴き手に伝えたかったのかもしれない。その姿勢とはおそらく、"それでも楽しむ"ということ。ハードな状況だからこそ、踊り、楽しみ、笑う。そんなッセージが本作には込められていると思う。


 本作でムーディーマンは、できる限りのユーモアと反骨精神を表現している。いわば "逃避のための享楽" ではなく、"闘うための享楽"。それが『Moodymann』という作品である。



(近藤真弥)

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