岩崎愛

| | トラックバック(0)

AI IWASAKI


やっぱり、シンガーというか

ひとりでやってる人が好きですね


それがポップ・ミュージックであるかぎり、最大瞬間風速的なインパクトは当然ある程度必要になってくる。しかし、21世紀という言葉をわざわざ使うのもはばかられるようになった今、リリース・タイミングという「時間」の制約に「あまりにも」しばられるのは、おかしいのではないか。心ある人たちは、そのことに気づきはじめている。


約1年前にリリースされた岩崎愛のアルバム『東京LIFE』を、ちょっと久々に聴きなおしてみて、ぼくはそんな思いを新たにした。


2013_11_ai_iwasaki_A1.jpg


 フォーキーかつソウルフルな瑞々しいサウンドに乗せて歌われる彼女の「うた」は、早くもエヴァーグリーンな輝きを獲得しはじめている。弾けるような思いきりのよさは、何度聞いてもほれぼれとしてしまう。ただ、彼女も、かつては「暗い」音楽をやっていたという。


「ものすごい暗かったんですよね。今も、基本的にはそんなに変わってはいないですけど(笑)」


 たしかにその片鱗も少しうかがわれるとはいえ(笑)、『東京LIFE』には、そんな時代をへたことゆえの、つきぬけた明るさがなにより強く感じられる。


「ライヴ活動してて...始めたころは19歳とかそのくらいだったんですけど、人間不信とか強かったんです。だけど、いろいろ年上の人たちと知りあっていくなかで、『ああ、こうなりたいな』って人が多かったんで。それで、どんどん自分も変わっていった」


 00年代後半にアルバムをリリースしたころの彼女は、大阪をベースに活動してきた。それが2009年、東京に出てきたきっかけは、なんだったのだろうか?


「大阪でライヴしてて、やる場所もメンツも変わらなくなってきたんですよ。同じ人が多くなってきて。東京から来るミュージシャンたちのほうが新鮮でおもしろいなと思えてきて。というか、だんだん飽きてきた...みたいな(笑)? ずっとこんなふうに、なんの進展もないまま、ぬるま湯につかるじゃないですけど...居心地はいいですけど、ずっとこの場所にいつづけるのは...と...。じゃあ、なんにもあてはないけど東京に行っちゃおう! と思って、ふんぎりをつけて行ったという」


2013_11_ai_iwasaki_A2.jpg

 お兄さんにもらったギターを手に、それを弾きはじめたのは16歳のころ。それまで彼女は、お兄さんが持っているCDを聴きまくっていた。グリーン・デイのアコースティック・ヴァージョンを耳コピして、やってみたのが、そもそものきっかけだった。


「US、UKにかかわらず、いろんなものを聴いてましたね。オアシスとか...レディオヘッドとかも聴いたし」


 ここでレディオヘッドの名前が挙がるところに、「暗い」時代のようすがうかがわれる? それはそれとして、今の彼女の音楽は、ストレートな「うた」。シンガーとして影響を受けたのは?


「そうですねー。キャロル・キングが、すごい好きで。あと...ユーミンですね。荒井さんのときの。荒井由実とか、すごい聴いてたし。あとは、なんだろうな...斉藤和義さんも好きだし。ジャニス・ジョップリン、ジョニ・ミッチェルとか...。やっぱり、シンガーというか、ひとりでやってる人が好きですね」


 キャロル・キングは、たしかに! 『東京LIFE』を聴いて、ぼくが最初に連想したのも彼女だった。そして、ユーミンの「やさしさに包まれたなら」は、今の仲間たちと知りあったきっかけでもあったという。


 大阪時代のシンガー仲間、はせがわかおりと彼女は、ずっとなかよしだった。彼女が東京にライヴをやりにくるときは部屋に泊めてあげたり...といった感じで。彼女が、岩崎のなじみのライヴハウスに出演したとき、とびいりで「やさしさに包まれたなら」を歌った。ちょうどそれを、はせがわのファンであるマシータ(元ビート・クルセイダース、元ナツメン)が目撃。HINATABOCCO(東日本大震災の直後に発足した、ストレイテナーの日向秀和発案によるミュージシャンズ・コレクティヴ)に岩崎を誘ったことが、今の仲間たちと知りあうきっかけとなった。


 あの震災直後には、音楽に関わる者は誰も、おおいに悩んだ。音楽にはなにができるのか? 彼女もそうだった。


「音が出したくて、悶々として...。大阪に帰ろうかとも思った」


 そんなタイミングでHINATABOCCOの一員となった彼女は、幸運だった。もともと2010年、東京に出てきたはいいけれどやはり(別の意味で)「わりと悶々としている時期(笑)」に作った『東京LIFE』のタイトル・ナンバーは、どこかサニーデイ・サービス「青春狂走曲」に近いノリを持っている。それが震災後の体験をへてレコーディングされたことにより、彼らのアルバム『東京』や、岩崎も好きだと言うくるりの「東京」に、まさるとも劣らない傑作の中核曲となった。


 彼女は、今年前半にもHINATABOCCOのシンガーのひとりとして東北を訪れている。この11月~12月にかけては、関西と東京5ヶ所をまわるミニ・ツアーも組まれている。彼女の次のステップが、そろそろ始まるのだろう。なんとなく縁起の悪い13という数字(いや、西洋かぶれですみません)から脱けだし、来たるべき2014年を迎える前に、是非とも『東京LIFE』を聴いてみることをお薦めしておく。


※岩崎愛の新曲「Rainbow」(プロデュースはthe chef cooks meの下村亮介!)を収録したCDシングルがライヴ会場で限定発売されることが、昨日突如発表された。彼女自身のサイトからリンクをたどれば、無料で試聴することも可能だ。興味を持たれた方は、是非!【12月7日19時22分追記】


2013年11月

取材、文/伊藤英嗣



2013_11_ai_iwasaki_J.jpg
岩崎愛
『東京LIFE』
(Only In Dreams)

retweet

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 岩崎愛

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://cookiescene.jp/mt/mt-tb.cgi/3790