ALEX CHILTON『Electricity By Candlelight - NYC 2/13/97』(Bar / None)

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ALEX CHILTON『Electricity By Candlelight - NYC 2:13:97』.jpg

 アレックス・チルトンといえば、今や既に「伝説的人物」...とぼくは思っているけれど、これを読んでくださっている方の多くは...知らない...か...?


 少年時代にジャクソン5・ブルー・アイド・ソウル版ってな感じのグループ、ボックス・トップスの一員として全米大ヒットを記録。しばらくあとに彼はビッグ・スターというバンドを始めた。70年代にはあまり知られていなかったものの、パンク・ブームの余波を受けてヴェルヴェット・アンダーグラウンドが世界的再評価を得たのと同時に(彼らほどではないにせよ)オルタナティヴ音楽ファンたちの多くに愛されるようになった。


 アレックスは数年前(2010年)に亡くなっている。80年代から現在にかけて多くの発掘盤がリリースされているが、これは、リリース元の情報によれば没後初の「公式CD」とのこと。いや、そんなことよりなにより内容がグレイトすぎる。


 ライヴハウスの灯りが消えてからおこなわれた演奏の記録。停電か会場に消されたか、それは、どっちでもいい(ちなみに「客電が落ちてからも演奏をつづけるバンド」を、ぼくは過去一度だけ見たことがある。『Remain In Light』直後の男性女性黒人白人混合編成だった時期のトーキング・ヘッズ)...。そういったシチュエーションであるだけに、なんと全曲カヴァーで「アンプラグド」。重度の音楽好きであれば誰もが知ってる...と言えるレベルの名曲がずらりと並ぶ。


 ピート・シーガーからサム・クックまで、多くの人にカヴァーされた「プロテスト・フォーク」...「If I Had A Hammer」がラスト前に置かれているのも、なんとなく彼のパブリック・イメージを裏切るようで、気持ちいい。そして、そのあとラスト・ナンバーはアルバム中唯一の「スタジオ・レコーディング」トラック。だけど、それと気づかないほど自然に、いい感じでマスタリングされているのも素晴らしい!


 かつて「60年代にヴェルヴェット・アンダーグラウンドを聴いた者は誰もがバンドを始めたいと思った。同じことが70年代のビッグ・スターにも言える」みたいなことを言った人がいた。それを引用しつつ「80年代ならR.E.M.だね!」みたいな原稿をかつて(20年くらい前に:笑)書いた記憶があるので、よく憶えている。R.E.M.はこの両者のファンだった。


 これを聴いて、みんなが「バンドを始めたい」と思うことはないかもしれない。だけど「音楽を作りたい」とは思う...かな? それはそれとして、この2、3ヶ月、ぼくはくりかえし聴いている。



(伊藤英嗣)


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