UNISON SQUARE GARDEN「桜のあと(all quartets lead to the ?)」 (TOY'S FACTORY)

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 歪んだ過去、不条理な世界を一刀両断する音、目の前の君を笑顔に変える魔法。それがUNISON SQUARE GARDENだ。作家の伊坂幸太郎は、「人の悪意やリスクのない暴力に対する強い嫌悪感がある」と語り、レイプやペット殺しといった弱者を狙った犯罪に対する制裁をたびたび小説に描く。このバンドでほぼ全ての作詞作曲をこなすベース田淵智也の信念とも似ている。彼は常にあらゆることに怒っていて、だからこそ笑顔を絶やさない。


 本作は漫画家ヤスダスズヒト原作のTVアニメ『夜桜四重奏~ハナノウタ~』の主題歌である。あの世とこの世の間に存在する桜新町で次々と起きる奇怪な事件を、特殊能力を持つ主人公たちが解決していく物語。ギター斎藤宏介、ドラム鈴木貴雄にベース田淵の3人による演奏風景は同時発売のライヴDVDで確認できるが、彼らのたたずまい、そして歌う内容はそのまま本アニメの主人公たちと重なる。表題曲「桜のあと(all quartets lead to the ?)」変拍子を重ねる目まぐるしい展開に、言葉をマシンガンのように叩きこむキメを多用する。しかしキャッチーなメロディーは自然耳になじむ。タイトルの英詩を繰り返すコーラスは子どもでもすぐに覚えそうだ。彼らは現代のロック・フォーマットを踏襲しつつも、同時にロック以前のポップスの在り方を取り戻そうとしている。ハード・ロック、ニュー・ウェイヴ、ポスト・パンク、様々な要素がつまっているようで、その実、ジャンルが枝分かれする前の大衆音楽へ帰納法的に立ち返っていく。音楽とは本来、難しくも堅苦しくもない、大人も子どもも手を叩いてはしゃぎ踊れるものだから。


 また、田淵は「マンガから生まれた言葉を音楽に乗せることなら誰にも負けない」と語り、声優への楽曲提供を積極的に行っている。『夜桜四重奏キャラクターソングベスト&オリジナルサウンドトラック「桜新町の鳴らし方。」』 においては、キャラクター・ソングの全作詞作曲までこなしている。彼らの音楽は日本のギター・ロックの先達だけでなく、アニメ・ソングからの影響も大きいようだ(アニメ・ソングだって馬鹿にできない。例えばアニメ『うる星やつら』の一連の主題歌は1級のニュー・ウェイヴ、シティー・ポップスとして聴くことも可能だ)。彼らは時代の最先端を行っているわけでも特別変わったことをしているわけでもない。彼らが他のギター・バンドと一線を画したのは、ありふれた素材から本質を抜き取った田淵の楽曲があり、3人それぞれが「これなら俺は誰にも負けない」という強固な意志を持って当たり前のことを黙々とこなし、ライヴに訪れるオーディエンス一人一人への敬意を忘れなかったからだと思う。往々にして当たり前のことこそ忘れがちで、だから私も何度も後悔して生きている。彼らの音楽からはそういった後悔の味も感じられる。



(森豊和)



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