ハルカトミユキ『シアノタイプ』(Sony Music Associated Records)

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 立教大学の音楽サークルで知り合ったというハルカ(ヴォーカル/ギター)とミユキ(キーボード/コーラス)によるユニット、ハルカトミユキ。インディーズ時代に発表した2枚のミニ・アルバム、「虚言者が夜明けを告げる。僕たちが、いつまでも黙っていると思うな。」「真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。」は、友人に勧められて聴いてはいたんだけど、いまいちコミットできなかったというのが正直なところ。


 メロディーは親しみやすく、譜割りも気持ちいい完成度の高いホップスが収められていたのは確かだ。筆者からするとエコー・アンド・ザ・バニーメンの姿勢を想起させる反同調圧力的歌詞も、興味深いものとして耳に馴染んだ。それでもハルカトミユキの音楽を聴くと身構えてしまうのは、端的に言うと聴いていて楽しめないから。例えばふたりが仲良くなったキッカケであるニルヴァーナは、イライラを吐き出す激しさがありながらも、それをエンターテイメントにする才能があった。怒りの塊みたいなザック・デ・ラ・ロッチャ(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)でさえ、ライヴ中は笑みを浮かべるのだ。セックス・ピストルズやザ・クラッシュもそう。どんなに攻撃的であろうとも、そこには必ず"楽しさ"があった。でなければ、自分の伝えたいことを伝える前に聴衆がいなくなってしまうから。インディーズ時代のハルカトミユキは無闇に食ってかかる印象が強く、その"楽しさ"が欠けているように思えた。


 しかし、メジャー・デビュー・アルバムとなる本作『シアノタイプ』には"楽しさ"がある。従来のグッド・メロディー、アレンジの多彩さ、言葉選びのセンスという魅力を損なうことなく、鋭さのなかにもリラックスした雰囲気が漂っている。ゆえに風通しも良く、多くの人に受け入れられるための契機としては素晴らしい内容だ。「マネキン」のギター・サウンドはマイ・ブラッディー・ヴァレンタインを想い出させ、モータウン・ビートが軽快に駆け抜けていく「Hate you」、そしてニュー・オーダーに通じるサウンドが印象的な「伝言ゲーム」など、今まで以上に遊んでいると言おうか、自由奔放な音作りが光っている。「7nonsense」のような実験的トラックもあり、音楽的彩度はかなり高い。


 とはいえ従来の毒は健在だ。「Hate you」は男にとって"脇腹にグサっ!"な歌詞だし・・・。それはともかく、『シアノタイプ』は素直に"良いアルバム"だと言える作品です。



(近藤真弥)

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