曽我部恵一「汚染水」(ROSE RECORDS)

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 「やっぱ自分の踊り方で踊ればいいんだよ」。マシンガン・ラップに切れ味のいいビート、最高に踊れるファンク・チューンで、私は何度リピートしたか分からない。


 彼の思想や今までの経歴とかはどうでもいい。現在の曽我部恵一は飛ばしている。アルバム『超越的漫画』からわずか1ヶ月のインターバルで突如リリースされた本7インチは、可愛らしいジャケットに踊れるビート、言ってみればそれだけ、そしてその即効性はポップ・アート、ポップ・ミュージックが持つ最大の武器だ。ずぶずぶしたダブに、一聴、意味のない対語の羅列のようなラップは、我々のハート(心臓)を的確に打ち、ビート(鼓動)を加速させる。


 B面が小沢健二「痛快ウキウキ通り」のカヴァーというのもたまらない。リヴァーブをかけた懐古的なガレージ・ファンク仕様のサウンドは、この曲がヒットした90年代がもう帰ってこない事実を我々に突きつける。モノクロ映画、あるいはドラマの回想シーンのよう。たまらなくメロウでせつない気持ちにさせる。


 A面に話をもどせば、小気味いい言葉の乱舞のなか、汚染水という言葉は巧妙に処理され耳に残らない。私は《君の汚染水を》というサビの歌詞を「君のセンスいいよ」と空耳したくらいで(笑)、サウンドそのものが脳に突き刺さる。汚染水とはこの曲を聴いている君のことで、曽我部はそれを受け入れると歌っているが、別に歌詞を聴き取らなくとも、曲全体のフィーリングとして伝わってくる。攻撃的でシニカルで、しかしどうしようもなくラヴ・ソングだ。ほとんど誰も賛同してくれないだろうけど別にいい。OTOTOYのインタヴューで曽我部自身もこう語っている。「たとえば、《与党も野党も政治家も芸術家も被害者も加害者も部外者もバカばっかり》と俺が歌ったときに、みんながその通りだと思わなくたって、俺はぜんぜんいいんだ」。


 最後に一つ付け加える。ミュージック・マガジン2013年11月号のインタヴューで、曽我部はじゃがたらのヴォーカリスト江戸アケミについて言及している。彼の台詞が書かれた、三軒茶屋のレコード店フジヤマの看板を最近よく見に行っていたという。冒頭に書いた台詞がそれで、そして全てだ。



(森豊和)

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