POP-OFFICE『PORTRAITS IN SEA』(Knew Noise Recordings)

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 今となれば、名古屋周辺のアンダーグラウンドと区切られる訳ではない幅広いアーティストを集めた、《Knew Noise Recordings》からのコンピレーション『Ripple』の意義は大きかった。


 そこにも参加していたPOP-OFFICEの「Epicureanism」に関しては、筆者はテレヴィジョン『Marquee Moon』、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド『White Light / White Heat』をリファレンスに出したが、ファースト・フル・アルバムとなるこの『Portraits In Sea』では、POP-OFFICEとしての美意識が貫かれたがゆえの輝きに耳を奪われる。


 少し紹介を入れると、POP-OFFICEは名古屋を拠点に活動し、Ryuhei Shimada(ベース/ヴォーカル/シンセ)、Yuki Nakane(ギター)、Hiroyuki Kato(ドラム)からなる3人組バンド。余計な装飾もないソリッドなサウンドはじわじわと評価を高めていたが、ようやくとも言えるこの『Portraits In Sea』は、名古屋のみならず全国的に名が知られていく契機になると思う。


 初期のライドを思わせる冒頭の「Something Black」では、《冷たい言葉と美しい花で彩る この夜を》という歌詞に見受けられるデカダンスと仄かなメランコリアが漂うが、そういった宙ぶらりんな状態は後半に向かうにつれ、ギター・ノイズとディレイにより茫漠と掻き消される。一転、ストレートなギター・ロック「Good Morning」では、やはり若さを感じるが、3分以内で疾走するその様は後先を考えない今のための熱量がある。何度も繰り返される《I Could Be The Sunday Morning》というフレーズも印象深い。


 そして勢いだけではなく、余白やタメを活かした曲に彼らの真骨頂を感じるところもある。例えば「Young Town」における反復されるギター、僅かな歌詞、ハミング、モグワイを想起させる緻密な盛り上がりといい、少ない音数でも飽きさせない構成力は見事だ。そういった構成力を結実させたのが「Whales」。10分ほどの大作だが、サイケデリックな浮遊感を保ち、Shimadaのこもったヴォーカリゼーションもそこに色を加えている。ライヴではインプロヴィゼーション含め、更に化けていきそうな感じも受けるが、5分前後からの展開はギャラクシー500やスペースメン3をふと思い出してしまった。


 青さと達観は矛盾せず鬩ぎ合い、成熟と拙速は過不足なく補填し合う。本作はそんな当然を混乱とともに往く。



(松浦達)

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