iGO「TRUE or FALSE」(ONE BY ONE RECORDS)

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 名古屋のロック・バンドiGOの新作は全5曲たった15分。彼らの持ち味であるギャング・オブ・フォー直系の躁的な狂騒は今作ではさほど目立たない。妙にどっしりとしている。ドラム吹原靖紀の安定したプレイだけではない。それは本作のテーマに由来する。流木の写真を用いたアルバム・ジャケットが暗示するように、この作品で歌われているのは「3.11後の世界を生き抜くこと」。みっともなくとも大切な誰かを守るために生き続けること。その決意が重心の低いビートを生んでいる。


 5曲のタイトルを並べるとアルバムの描く具体的なストーリーが頭に浮かぶ。冒頭の「反動」「青春」はライヴ映えしそうなストレートなパンク・ロック。3曲目、ファンキーな間奏のギター・リフがしぶとい生命力を見せる力強いミドル・チューン「誰も死にたくはない」では、ヴォーカル/ギターの茜谷有紀の絶叫が胸に染みる。続く「日本」というバラード・ナンバー、夜の浜辺で主人公は世界の終わりの前兆を偶然見つける。夜明け前に必死で彼は砂に隠すけれど、本当に埋もれていたのは自分達自身だったと知る。栄のセントラルパークとテレビ塔が歌詞に登場する「UNDER THE RAINBOW」は一周回って原点に戻ったようなダンス・ナンバー。静と動が交差するアンサンブル、「王様は裸だ」と泣きながら叫んで突進する。今の世界において、戦うために「逃げる」こと、続けるために「あきらめる」ことほど大切なことはあるだろうか。茜谷はそう私たちに問いかけているようだ。


 iGOの所属する《ONE BY ONE》の柴山順次は、レーベル所属バンドを架空のヒーローに例えて話す。茜谷は『キン肉マン』の主人公、キン肉スグルだと。スグルは作中の設定によれば、親に捨てられ大人になるまで一人で成長したエイリアン(異邦人)である。拠り所がない存在、国籍も無いはず。それなのに日本を守るヒーローとして戦っていた。しかし子ども達にさえ馬鹿にされ、ついにはアメリカから来たテリーマンに国家公認ヒーローの座を奪われ、国外追放だと告げられる。折りしもそのとき東京を怪獣が襲う。しかしテリーマンは金がなければ戦えないと、救いを求める子どもをあざ笑う。スグルはテリーマンを殴り、子どもの親を助けに怪獣に立ち向かっていく。「姿を見せたら国防軍に攻撃されるぞ! 」と警告するテリーマンにスグルは言い捨てる。「大和魂が守ってくれるさ」(『キン肉マン』ジャンプ・コミックス第1巻「アメリカからきた男の巻」より)。子どもの頃は疑問だった。ドジでダメだろうと日本人のために必死で戦うキン肉マンがなぜ国防軍に攻撃されるのか。今は不思議だとは思わない。『キン肉マン』の作者であるゆでたまごは当時の日米関係を皮肉ったのだろうが、今の社会はより複雑だ。震災後の復興がスムーズに進まないなか、汚染水はブロックされたとされ、経済再生のために五輪誘致が優先される状況を連想する。今、現実に起こっている風景なのだ。


 iGOの音楽は一聴、何の変哲もないパンク・ロックだ。しかし見事な緩急や感情を含んだ演奏と歌唱に心を揺さぶられる。ライヴでは、鋭いギター・カッティングとは対照的な野田昌吾のゆるいMCに爆笑し腹がよじれることも重要なポイントだ。



(森豊和)


 


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