GARGLE & BOSQUES DE MI MENTE『Absence』(Fluttery)

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 美しい鐘の音が響く。古きヨーロッパの街並みを思わせるバイオリンの調べと、荒涼とした空気感を漂わせるギター、儚くも温かいピアノ、重厚に鳴り響くパーカッション。ボスケス・デ・ミ・メンテはスペインのコンテンポラリー・ピアニストで、日本のポストロック・デュオ、Gargleのアルバムに参加したことから今回コラボレーション・アルバムを発表するに至った。


 本作で彼らはストリングスを多用しているが、これは東京音楽大学の知り合いに演奏してもらったそうだ。通常ロックにおけるストリングス・プレイヤーというのはロックへの理解が何より必要になり、演奏技術の面はどうしても二の次になってしまうところがあるため、このような完璧な演奏を聴くことはなかなか難しい。日本でエレクトリック・ヴァイオリンの第一人者である勝井祐二氏が評価されている理由も、演奏力とロックやテクノへの理解を兼ね備えているからだろう。


 基本的にはバッハやショパンからの影響があるのだと思う。前衛的な現代音楽というよりは、正統なモダン・クラシックの系譜が感じられる。そこにサティやラヴェルのような孤独なピアノが垣間見えることで、直球のクラシック音楽から外れた面白さが見えてくる。マイナー・コードの物憂げな曲調のなかで、ふとしたメジャー・コードにハッとさせられる瞬間が多々あり、コンテンポラリーとポストロックの化学反応がこのようなものになるとは大変興味深い結果だが、実験的すぎずクラシック然としすぎてもいないところは聴きやすく感じるかもしれない。


 ピアノと弦は、筆者が十数年クラシックを学んできたなかでも特に重要な位置を占めている二つである。故にクラシックでない音楽においても、ロックで言えばゴッドスピード・ユー!・ブラック・エンペラーであったり、テクノで言えばワールズ・エンド・ガールフレンドであったりという人たちに惹かれる傾向があり、そういった音楽を聴いているリスナーにとっても、モダン・クラシック以外にもアンビエント、実験音楽、電子音楽といった要素が見られる《Fluttery》のリリースは好まれるのではないかと思っている。ゴッドスピードが初めて受けたとされているインタヴュー(確か地元のファンジンだった)で、当時最新作であった「Slow Riot For New Zero Canada EP」についてバッハの影響を語ったり、他にもグレツキからの影響を公言したりしているところは、本作にも通じる部分だろう。


 今でこそトゥーチェロズのようなクラシック界の異端児が注目されているけれど、大きな括りのジャンルをクロスオーヴァーさせる彼らのようなアーティストはまだまだ面白いことをしてくれそうだ。



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