FU-MU『POP EYE SNOB』(Babyboom Records) 

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 とにかくすごいユニットだ! 二人で複数の楽器とループ・システムを使い分け、あっと驚く音の磁場を作り上げる。名古屋在住の石井健太と中溝悦雄によるツイン・ヴォーカル・ユニットFU-MU。彼らはファンク、ジャズ、ヒップホップ、エレクトロニカ、様々な要素を組み合わせたトラックに、90's J-POPばりにキャッチーで郷愁さえ誘うコーラスを乗せる。打ち込みを一切使わないリアル・タイム・サンプリングによる即興性の高いライヴ・パフォーマンスは独特だ。緻密でパワフルな演奏、アート方面に向かいがちなところを、ギリギリ踏みとどまっている肉体性、そして最終的なポップさといったら! 


 例えば「models」を聴いてみてほしい。不敵にもMr. Childrenに影響を受けたと自ら公言する甘いコーラスが、弾けるようにうねるファンク・ビートに乗るさまは、聴く者にいびつな多幸感をもたらす。サンプリングによる音の重なりが立体感を生み、時に風の匂い、小川のせせらぎ 小鳥の声を幻出させる。アルバムを通して一本の映画を観ているような、違った大陸に住む人々の生活の息吹が伝わってくるような、そんな感覚を与える。かつて伊藤英嗣はフレーミング・リップスを「どうしてこんなポップなバンドがバカ売れしないんだろうと思うと同時に、なぜここまでアバンギャルドな音楽で続けられるんだろうとも思う。彼らの音楽には明らかに二面性がある」(※1)と評した。FU-MUにも私はまったく同じ言葉を捧げたい。


 「とてもごちゃごちゃしてまとまりがないかもしれない。おもちゃ箱をひっくり返したようなって表現があるけれど、僕らの場合は楽器箱って感じでしょうか。伝えたい気持ちはシンプルに曲のタイトルのままです。皮肉を言いながらも、でもわかる人には聴いてもらいたいし、やはり人とつながりたい」。そう石井は語る。同じく名古屋で活動していたOGRE YOU ASSHOLE出戸学の発言を思い出した。彼はインディー時代に「僕らの音楽なんて誰にも分からないと思う。自分達だけでいいものを作っているだけ。お客さんに伝わったらすごいよね」(※2)と語っており、実際、当時のライヴで出戸に感想を告げると戸惑ったような、少しはにかんだ表情をしたもので、FU-MUの2人もやはりそんな感じだ。彼らの音楽は名古屋のみならず、日本中見渡しても珍しく流行から外れているように思う。しかしSTUDIO VOICEで「シーンの鬼っ子」と評されたように、現在の音楽シーンを大きく変える可能性を秘めたアクトだ。実際、そんな彼らにも徐々に仲間が増えつつある。盟友のFREE CITY NOISE、ダモ鈴木との共演にも誘ったドロロニカ、彼らを慕うsukida dramas、一緒にツアーするPOP-OFFICEなど、狭い名古屋のシーンで異端同士が惹かれ合い集まっていくのかもしれない。


 彼らは元々、ソニック・ユースに影響を受けた4人組バンドを組んでいた。そこから1人、また1人メンバーが抜け、それでも続けようとした時、今の音楽性が生まれたという。彼らは「欠落」から始まっている。不完全であること、逆境を逆手にとって生き延びるための音楽。私はそう解釈したし、あながち間違いではないはずだ。そしてFU-MUの音楽が時代の求める音の飢え、欠落とリンクする時が来ることを私は確信している。



(森豊和)



※1 : 伊藤英嗣著『ネクスト・ジェネレーション―ロック&ポップ・ディスクガイド1980‐1998』より引用。


※2 :『Rockin'on JAPAN 2008年11月号』インタヴューより引用。


【編集部注】文中におけるメンバーの発言は、執筆者がおこなったメール・インタヴューからの抜粋です。

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