bed『Indirect Memories』(3P3B)

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 不安や孤独で一杯だった幼い頃の僕に、成長した現在の僕が手を貸してそっと包み込む。「大丈夫だよ、お前はきっとなんとかやっていけるから」。現在の僕は幼い僕にそう呼びかける。


 京都、大阪在住、オルタナティヴ・ギター・ロック・バンドbedの新作を聴いてそんなイメージが浮かんだ。ファースト・アルバムを名古屋の《iscollagecollective》から発表し、2011年の7インチを同じく名古屋の《STIFF SLACK》からリリースしていることや、LOSTAGEやOGRE YOU ASSHOLE、bloodthirsty butchersらとの交流から、ある程度彼らの音楽性は想像できるかもしれない。ゆらゆら繰り返されるギター・リフは心地よいゆりかごのようで、芯には熱がみなぎっている。


 粒ぞろいの曲が並ぶこのレコードをかけて縁側に寝転ぶ。時間の流れが変わる。例えば5曲目「ピリオド」のコーラスでなんだか泣きそうになってしまう。子どもの頃、親が共働きで、不定期に祖父母の家に預けられ、友達もろくにおらず、一人で蝉のぬけがらを集めていた夏の日を想い出す。続く6曲目「言い訳」になぜかほっこりする。架空の二人が挨拶をかけ合うような不思議な歌詞。


 Bedの歌は我々を派手に鼓舞したりはしない。その代わり、忘れていた「怯えた自分」を見つける手助けをする。彼のあやし方を教えてくれる。後悔も、それを打ち消すために口にした言い訳も含めて、過去から現在まで一貫して自分は自分。そこからやっていく、間違いを一つ一つ訂正していくしかない。彼らの音楽を聴いていると、そう語り合っている気になってくる。


 話は少し変わる。bedのインタヴュー、レヴュー等をまとめたメンバー公認の電子書籍が発行されており、そのなかでタワーレコード京都店の堀田慎平はこう書いている。「今作では派手な展開やアレンジがあるわけではないし、シャウトも控えめ。言うなれば常に平熱で続いていくアルバムだ。(中略)人は平熱のときが一番心地良いものだ。高熱にうなされてばかりではいられない」。


 全くその通りだし、私はこのレヴューを読んで、躁うつ病への精神療法を思い出した。例えば激しいハード・ロックを聴くのが楽しいのと同じように、躁状態の人が徹夜で仕事をしたりクラブ通いをするのは病みつきになるのかもしれない。躁うつ病の人は少し気分がハイ(躁)な状態を正常だと考える傾向がある。だから正常の状態を調子が悪いと勘違いして、「自分はうつではないか」と精神科を受診することがある。まさに平熱の心地よさに慣れる必要があるのだ。最終曲「僕ら」でbedはこう歌う。《僕らは僕らでやってる それなりに楽しくやってる》。そういうことなのだ。



(森豊和)

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