豊田道倫のステージ衣装 〜豊田道倫 at 新宿シアターpoo 2013.10.25〜

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今回は吉田峻さんから投稿をいただきました。

ライヴ評というよりは、記事タイトルにもあるように"衣装"について多く語っていますが、なかなか面白い着眼点だと思います。


(近藤真弥)



なお、このコーナーでは、常時みなさまからの投稿を受けつけています。ただし、投稿に関するルールがいくつかあるので、それをふまえたうえで投稿していただけたらと思います。以下がそのルールになります。


・文字数は最低でも1000字以上。


・原稿の内容は、音楽に関することを主題にお願いします。ただ、主題と文脈的に繋げられるなら、アニメ、映画、小説、哲学など、他要素を混ぜても問題ありません。


・掲載する際には、投稿されてから10日以内に編集部のほうから連絡させていただきます。連絡がない場合は、申し訳ないのですがボツということになります。


・送っていただいた原稿の表記については、クッキーシーンにおける表記統一の決まりに合わせるため、編集部側で変える こともあります。それらがあまりに大量になったり、それによって文章のトーンが変わってしまう場合など問題があると判断した場合も、編集部のほうから連絡 させていただきます。


音楽について語りたい欲求がある若者から、いまだ中二病が心に残っているせいで音楽にロマンを求めてしまう大人になりきれない大人まで、どんな方でも大歓迎です。FEEDBACKのところから投稿できます。よろしくお願いします!

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 ロックはステージ衣装だ。ステージ衣装を着て演奏するのがロックだ。私服のままステージに立ったり、ステージ衣装のまま街に出て飲み食いするミュージシャンもいるかもしれない。だがしかし、ロックはステージ衣装だ。


 豊田道倫の『mtv』(2013)のアルバムジャケットは、新宿通りを渡る豊田道倫の写真だ。ベージュのスーツジャケットに白のシャツ、サングラスという出で立ち。これは豊田道倫のステージ衣装である(私服はだいたいキャップを被って、Tシャツにジップアップのジャケットを着る、サングラスはしていない)。


 『歌詞とエッセイ集 たった一行だけの詩を、あのひとにほめられたい』(2013)には、このジャケットに使われた写真を撮った際の、梅佳代とのフォトセッションがカラーで載せられている。こちらで見るとスーツは明るいグレー。アルタのシャッター前でピース・サインをしたり、ビジネスホテルでギターを弾いたりする姿が収められている。すべて、ステージ衣装。日常を写したようでありながら、ステージ衣装で新宿の街を歩くことはないだろうから、すべて演出された写真である。はっきり言って、このステージ衣装はおしゃれじゃない。しかし、かっこよくないとは言えないかっこよさがある。そういえば、加藤和彦のソロ・アルバム『それから先のことは...』のジャケット写真の赤いダブルスーツにアディダスのカントリーも、私服なのかステージ衣装なのかわからないがおしゃれじゃない。でもかっこいい...。ちなみに美音堂の加藤和彦トリビュートアルバム『Catch-35』のジャケットはベスト・アルバム『Catch-22』ではなく、『それから先のことは...』のジャケットをトリビュートしていた。赤スーツにアディダスは、やはり印象が強いのだろう。


 『mtv』のジャケット写真の魅力にとりつかれ、私は豊田道倫のライブに行きたいと思った。できればソロライブに行きたい。私は貧乏臭いので、これまでAZUMIや鈴木博文とのツーマンには行ったことがあるのだが、ソロライブには行ったことがなかった。はっきり言って、アルバムの内容が良かったからじゃない(もちろん良かったが)。ステージ衣装が見たいから、ライブに行くのだ。そして新宿シアターpooでのソロライブが告知され、私は楽しみにしていた。


 開場時間を10分すぎて、客電が消された。豊田道倫は舞台袖から登場し、スポットライトのなかに入る。「ポップさ」に「うわあ~」と声が出そうになった。そしてかっこいい。1曲目「チーズバーガー、コカコーラ」が歌われる。濃いベージュのスーツジャケット、赤のシャツ、ワークパンツにスニーカーはサッカニーのシャドウ。やられた。スニーカーである。しかも大きなフォルムのハイテクスニーカーだ。パンツも太い。スーツとはミスマッチだが、たまらなくポップだ。『たった一行だけの詩を、あの人にほめられたい』の帯には「孤高のシンガー・ソングライター」と書かれていたが、孤高ではない。俗っぽくて大衆的で、温かくやさしい。そういうところをポップだとか、ロックだとか私は感じた。私服でステージに立ったら、こんなにポップではない。サングラスも絶対に必要だ。サングラスがなければ、たぶん観客は「どこを見ているのだろう」と、あまりどこを見ているか分からない小さな目を見てしまう。そうすると雰囲気が真面目になりすぎてしまう。そういうことも豊田道倫はわかっているんじゃないか。「チーズバーガー、コカコーラ」はこんな詞。


 《チーズバーガー、コカコーラ ポテトは今日は食べれない チーズバーガー、コカコーラ こんな時間に子供がいる》


 新曲も多く歌われた。初めて聴く曲でも、歌はやさしく耳に入ってくる。かえってすでに録音され、発表されている曲は崩されて歌われるので新鮮だ。「メリーゴーラウンド」ではコラージュ的に詞が歌われていたし、曲はどれだか忘れてしまったが、歌をマイクに乗せたり、乗せなかったりしながら聞かせていた。「メリーゴーラウンド」は感動的な歌。


 《雨に打たれたくらいが ちょうどいい夜 やさしい目をした雑種犬に 会いたくなった 生きてるだけでラッキー 食えてるだけで幸せ どこかでビールが飲みたい めしはちょっとでも 今日も身体を使った だけどあんまり疲れていない ああ むなしい ああ せつない 僕は何をやって(い)るの 雨に煙るメリーゴーラウンド 回転寿司 明るい店の前で 立ち尽くす 回る回る まぐろ あじ はまち・・・》


 MCでは客電を気にして、手でサインをだしながら(PAにも手でサインをだしていたが、その姿は「現場のベテランのおじさん」を見るようで、妙に落ち着く)、ぼそぼそと衣装についても喋っていた。スーツは「中古で600円」で、懐の内ポケットが大きいので、拳銃が入っていたかもしれないとおどけていた。休憩なしで19曲を歌い、アンコールは4曲。


 映画『ラスト・ワルツ』で、「まだいたのかい?」と言ってアンコールにでてくるロビー・ロバートソンが私服に着替えているのがたまらなくかっこいい。アンコールが私服だったら、と豊田道倫にも少し期待してしまった。アンコールが私服だったら、ロック・スターだ。しかし本編終了からアンコールまでの僅かな時間で、着替えることなどできるはずもなかった。ステージ衣装も着ず、私服でロックする人はべつに見たくない。


(吉田峻)

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