OKKERVIL RIVER『Silver Gymnasium』(ATO / Hostess)

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 ウィル・シェフ率いるオッカーヴィル・リヴァーが今作『The Silver Gymnasium』で見せる、拓かれたバンド・サウンドにあのダミ声が交わることで紡がれるナラティヴには、多くの人たちが驚きと感動をおぼえたかもしれない。


 元来からルー・リードの称賛、ノラ・ジョーンズの作品への参加、2010年のロッキー・エリクソンの見事なプロデュースなど、フロントマンのウィルの才能は多方面から認められていたところがあり、アルバムごとにチャート・アクションの反応や彼らを取り巻く熱量も高くなってはいた。


 前作『I Am Very Far』は、やや散漫な内容だったものの、トラディショナルなカントリー、ブルーグラス、ブルースに沿った曲からサイケな電子音も入り乱れ、実験的でパンクなものまでが引き裂かれながらも、キャプテン・ビーフハートやフランク・ザッパの作品を聴いたときに感じるカタルシスも含んだ感覚は特有といえるもので、筆者は非常に気に入っていた。


 ここで少しだけ来歴に触れると、オッカーヴィル・リヴァーは1998年、テキサスにて結成された。ボン・イヴェールやスモール・ブラックなどがサインしている良質なUSレーベル《Jagjaguwar》からリリースされた作品群はどれも興味深く、私的には『Black Sheep Boy』のリリシズムとルーツ・ミュージックへの探求心は今でも再評価されて然るべきだと思う。そして、アニマル・コレクティヴやフリート・フォクシーズなどの着実な地表化の機運と併せ、確実に評価は高まり、ついに今作で全米トップ10に入ったことが示すように、彼らは2013年を象徴するバンドのひとつになろうとしている。


 ウィルが自身の少年時代を回顧し、振り返るコンセプチュアルな叙情詩たる今作のブックレットには、地図とともに各曲の背景が記され、ニューハンプシャー州の自然あふれる田舎町、メリデンでの日々が豊かな音楽と語り口によって紡がれてゆく。


 冒頭の「It Was My Season」は、軽快なピアノとコーラス・ワークがウィルの歌唱を引き立てるポップな曲。アイアン・アンド・ワインにも似た、美しさと枯れた雰囲気が同居している。そこで、ノスタルジックに自身の故郷に対する想いや両親を振り返る。ホーンが印象的な2曲目の「On A Balcony」といい、ソニック・ユース、ダイナソーJr.、カート・ヴェイルなどの作品に関わってきたプロデューサーのジョン・アグネロの手腕はさすがで、これまでのウィルらしくないストレートなリリックも目立つが、ブルージーで切ない「Lido Pier Suicide Car」や、何度もリフレインされる《若くあれ》という咆哮が胸に染みる「Stay Young」辺りの情感に誘引させられる余韻こそが本懐なのかもしれない。ラストの「Black Nemo」では去りし景色に向けての慕情を伝うように、堅実にキャリアを重ねてきた彼らの根幹を感じ取れる。


 今作を契機にして、過去の作品群にもあらためて脚光があたってほしいと願いつつ、彼らはライヴも素晴らしいので、11/30〜12/1に行なわれるホステス・クラブ・ウィークエンダーでの初来日を体感してほしいと思う。


《I do the same, don't be ashamed, I'm the same / Yeah, I'm that way / But I try every day and all the time(筆者拙訳:僕は同じでいい、恥じることなく、同じで そのように でもさ 僕は毎日とすべての時間の中 挑むんだよ)》

(「All The Time Every Day」)



(松浦達)



【編集部注】『Silver Gymnasium』の国内盤は11月27日リリース予定。

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