lyrical school『date course』(T-Palette Records)

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『ストップ!! ひばりくん!』の江口寿史がジャケット・イラストを描いているのは反則だ。さらに新曲ひとりぼっちのラビリンスをはじめ5曲提供のtofubeats、ラストを締めるMyかわいい日常たちを提供するイルリメこと鴨田潤、そして泉まくら、ゆーきゃん等をリリースするレーベル《術ノ穴》主宰のFragment等、楽曲提供アーティストの豪華さといったら。しかしこのアルバムの最大の聴きどころは、何よりも彼女たちのラップのかけあい、その気持ちよさだと思う。革新性とか上手い拙いの問題ではなく、自らの役割のなかでどれだけ個性を表現できるか。改名、メンバーチェンジ後初となるフル・アルバムは、3つのインタールードを挟み計10曲、6人のガールズ・トークをそのままトラックに乗せたような自然体で、かつ聴くものを踊らせる万人向けのジャパニーズ・ヒップホップだ。


「友人のバンドがプロ・デビューしたものの、演奏はスタジオ・ミュージシャンによるものだった」とは、浅野いにおの漫画素晴らしい世界のエピソードの一つ。はっぴいえんどの前身であるエイプリル・フールのさらに前身バンドであるフローラルは、モンキーズ来日に際して「本人達は演奏できずスタジオ・ミュージシャンによる録音」という噂のあった彼らのバック・バンドをさせるために公募で結成されたという。そもそもビートルズ以前のミュージック・ビジネスでは作詞作曲、歌唱、演奏、すべて分業体制が当たり前だった。2012年の紅白での「ヨイトマケの唄」が今なお記憶に鮮烈な美輪明宏はいう。「昔のコンサートはカヴァー曲を、前口上する弁士の解説の後に、歌わなければならなかった。オリジナル曲を歌い自分でコンサートをプロデュースする私は、芸能界の古参から激しい攻撃を受けた」と。


 80年代の細野晴臣、90年代の小室哲哉の例を挙げるまでもなく、アイドル歌謡へのアンチテーゼとして成長した自作自演のロックンロールが、いつしか主流になると、今度はロック・ミュージシャンがアイドルをプロデュースするという逆転現象が起こった。そもそもモーニング娘。をブレイクさせたつんく♂のグループ、シャ乱Qのコンセプト自体がアイドル歌謡へのオマージュであり、tofubeatsはそのつんく♂へのリスペクトを口にしている。だとしたら、インディーズ上がりのふりをして実は作詞作曲、演奏に至るまで外部提供のロック・バンドと、一流のトラック・メイカーから楽曲提供され、ダンスの練習を死ぬほどこなし百万ドルの笑顔を振りまくアイドル・グループ。どっちを応援したいだろうか(極端な比較ではあるけれど)。


 握手会には参加しなかったが、名古屋のタワー・レコードで2日間計4回のステージをこなした彼女たちのパフォーマンス、その最後の回を観た。このアルバムで描かれる彼女たちの夏の日々を早回しのジェスチャーとダンスで楽しむことができた。個人的に印象に残ったのは今夏加入した本多未南だった。誰が可愛い、誰が技量があるという話ではない、最も経験が少なく最もステージ慣れしていない彼女、その分追いつこうと一生懸命なのだろう。そしてそれは別のメンバーが同じ立場だったらやはり、そのメンバーに対してそう感じたかもしれない。いろいろ書いてきたが、結局はtofubeatsのアルバム推薦コメント、この一言に尽きる。「皆さん思い思いの人とのデートコースを予習しながら聴くのがおすすめです」。



(森豊和)




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