JOHN WIZARDS『John Wizards』(Planet Mu)

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《Planet Mu》からのリリースということもあり、多彩なダンス・トラックが詰まっているものの、まず、彼らの在り方そのものが興味深い。南アフリカのケープタウンを拠点に活動しているアーティスト、ジョン・ウィザースとルワンダ出身のエマニュエル・ンザランバの2人を軸にした総勢7人からなるバンドの初作であり、多くの音楽性が混在している。そのなかでも、やはり、サウスアフリカン・ハウス、シャンガーン・エレクトロなどのリズムが主に脈打っているのは彼らの特徴だろうか。


 なお、シャンガーン・エレクトロに関しては10年代にじわじわと隆盛してきている音楽だが、そもそも、80年代的なシャンガーン・ディスコとニュー・ウェイヴの要素を保持したまま、よりBPMを高速化し、8ビットのチープネス、マリンバなどの民族楽器の音などを入れて、シャッフルし音像化したもので、南アフリカのストリート・ミュージック、クラブ・ミュージックとして機能しているのみならず、世界の先鋭的なビート・メイカーたちに注視もされている。


 このアルバムでは、若干25歳のジョンの幅広い感性がメインに置かれているのもあり、冒頭の「Tet Lek Schrempf」からスペーシーさとトライバルが合わさった曲で始まり、そのまま、リードEPとしてリリースされていた「Lusaka By Night」では、エマニュエルの声が加工された浮遊感溢れるダヴィーでキラキラした曲へと繋がる。このEPにはリミックスも含まれており、それがシンプルなフロア対応になっていたり、アルバム未収録の「I Is」も変則的なビートが前に出たIDMとして興味深く、もしも、今作で関心を持った方は手に取ってみて欲しい。


 そして、3曲目の「Limpop」では、いかにもなシャンガーン・エレクトロを基底に、チップ・チューン的に楽しく体を揺らすことができる。ただ、次曲ではその印象を覆すようなソウル・ミュージック風の「Muizenberg」へと転換するなど、いわば、コンセプチュアルに細心を配っている訳ではなく、コンピレーション的に何でもアリの面白さと刹那の愉しさに準じた好奇心を放り込んでいる様は、聴いていてフラットに心地良い。


 チルウェイヴ、アンビエント・ミュージックの幅も包含し、基本2分台のコンパクトな尺で纏められた曲が次から次へと様々な意匠をまとい、繰り広げられる。後半は、やや内省的な曲も見受けられるが、しかし、キラキラした電子音とジャジーなグルーヴと緩いリズムは浅い感傷を逸らしながらも、エマニュエルの声、ギターの響きが強調されたトラディショナル・フォーク風の最終曲「Friend」は切ない情感で締めくくられる。


 アイデア先行ともいえるアティチュードは逆に頼もしくもあり、ネット上に無限に溢れる音楽の点と点を結び、自分たちのトラディショナルな音楽的語彙を併せ、デスクトップ上で最終情報処理した想像力の飛距離を試す、そんな内容になっているともいえるかもしれない。


 ジョンがケープタウンで手掛けているCM音楽もそうだが、音楽はときにこういった辺境からボーダーレスに世界中の人たちの五感を刺激する。



(松浦達)



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