DJ RASHAD『Double Cup』(Hyperdub / Beat)

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 ここ数年のあいだで、ジュークの名は至るところで見かけるようになった。イギリスではポスト・ダブステップ的に受け入れられ、アメリカではスラヴァ『Raw Solutions』が示すように、2010年代以降のインディー・ダンスと交わるなど、多様化も進んだ。日本ではSHIN-JUKEのような面白いジューク・イベントが定期的に開催され、さらにはトラックスマンRPブーもアルバムを発表したりと、本場シカゴのトラック・メイカーも絶好調。


 こうした盛り上がりのなか、DJとして世界中を飛び回る売れっ子、DJラシャドが《Hyperdub》からアルバム『Double Cup』をリリースした。結論から言うと、これは紛れもない傑作。本作を機にDJラシャドは、J・ディラ、フライング・ロータスハドソン・モホークと並び、ビートを鳴らす多くの者に影響を与えるトラック・メイカーとして記憶されるだろう。それほどまでに本作は、多様なトラック群で彩られている。


 もちろんジュークを基調にしているが、「She A Go」はヒップホップの要素を感じさせ、「Only One」はR&Bシンガーが歌っていてもおかしくない上品さを漂わせる。また、随所でジャングルを取り入れているのも面白い。


 とはいえ、そこで完全にセルアウトしないのがDJラシャドのすごいところ。官能的なヴォイス・サンプリングが耳に残る7曲目の「I Don't Give A Fuck」以降は、ジュークが持つラフでダーティーな快楽性をあらわにしており、暴力的なキックが打ち込まれる「Reggie」、そしてアディソン・グルーヴを迎え、聴き手を文字通り"飛ばす"ようなアシッド・サウンドが展開される「Acid Bit」などは、1度聴いたら抜け出せない高い中毒性を孕んでいる。それと「Acid Bit」は、『TB Resuscitation』期のハード・フロア、言ってみれば90年代テクノの匂いを醸し出しているように聞こえる。このあたりにも、あらゆるジャンルを跨ごうとするDJラシャドの意図を感じ取ることができる。


 もしかすると、カニエ・ウェストがジュークでラップをする日もそう遠くはないのかもしれない。そう思わせるほど、『Double Cup』はジュークのネクスト・レベルを力強く提示している。



(近藤真弥)

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