DEMICAT「Out Loud」(Foundation / Vitamin)

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 韓国のホンデ界隈に行くと、洗練と混沌がアートとして撹拌され、投げ出されている感覚を受ける。現在のホンデ・シーンは、弘益大学校周辺を巡る何らかの記号性を持ちつつも、カフェ、クラブ、雑貨店、ライヴ・ハウスまでがセンスを鬩ぎ合う、複合カルチャーの発火点としての意味が強くなっている。


 そんななかでも、2006年にDJとして活躍し始めたデミキャットは、クラブ・ジャズとスタイリッシュで都会的なサウンドをベースにした作品群がホンデのカフェやクラブでパワー・スピンされるなど、後進に多くの影響を与え、クールなユース・カルチャーとしての場を盛り上げていたといえる。


 しかし、韓国の女性アイドル・グループ、シスターの「How Dare You」のリミックスでは、一時期のダフト・パンクに通じるフィルター・ハウス的な煌めきを導入しており、自身の名義では約3年振りとなるこの「Out Loud」でも、より幅広い層に受け入れられるであろう舵取りがなされている。


 ダブステップ以降のファットなビートを基調に、ネオン・バニーを招いた艶美な「Singing Bird」では、フリーテンポ、スタジオ・アパートメント、デデマウスの持つエレガントでしなやかなムードを醸し出し、ナイト・クラビングのための機能性も垣間見える。


 その他にも、スペーシーな「Higher Ground」や「Hold Me Tight」におけるグリッチ・ホップの援用もありつつ、大文字の80年代的ディスコティックな眩さをなぞり、初期の彼にまとわりついていたストイックな印象を変えるかもしれない5曲が、過渡期としての今を刻印している。


 ホンデ・シーンも一時期に比べれば爛熟し、他分野同士が交流するハブとしても機能するなか、"何でもアリは、そうでもない"という峻厳な端境期に来ているような感覚をおぼえる。そこで、早くからホンデ・シーンの一端を担っていたデミキャットがNU-JAZZ、クラブ・ジャズのカテゴリーを対象化し、不特定多数の人たちへの訴求力を持つサウンドにシフトしたのは興味深い。ポテンシャルを秘めたアーティストだけに、フル・レングスも含め、都度のサウンド・ワークに期待したい。


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