テニスコーツ at ビジターセンター&スタンドカフェ 2013.9.25を観て

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前回は、編集長の伊藤英嗣による《PHOENIX『Bankrupt!』を通して見える新自由主義的なカルチャー・ビジネスの状況》をアップしましたが、今回は松浦みきさんが投稿してくれたテニスコーツのライヴレポをお届けします。


ライヴの様子や会場の匂いが伝わってくる文章には、松浦さんの優れた観察眼とテニスコーツに対する愛情がこれでもかと滲み出ております。なので、多くの人に読んでいただけたら嬉しいです。


(近藤真弥)


なお、このコーナーでは、常時みなさまからの投稿を受けつけています。ただし、投稿に関するルールがいくつかあるので、それをふまえたうえで投稿していただけたらと思います。以下がそのルールになります。


・文字数は最低でも1000字以上。


・原稿の内容は、音楽に関することを主題にお願いします。ただ、主題と文脈的に繋げられるなら、アニメ、映画、小説、哲学など、他要素を混ぜても問題ありません。


・掲載する際には、投稿されてから10日以内に編集部のほうから連絡させていただきます。連絡がない場合は、申し訳ないのですがボツということになります。


・送っていただいた原稿の表記については、クッキーシーンにおける表記統一の決まりに合わせるため、編集部側で変える こともあります。それらがあまりに大量になったり、それによって文章のトーンが変わってしまう場合など問題があると判断した場合も、編集部のほうから連絡 させていただきます。


音楽について語りたい欲求がある若者から、いまだ中二病が心に残っているせいで音楽にロマンを求めてしまう大人になりきれない大人まで、どんな方でも大歓迎です。FEEDBACKのところから投稿できます。よろしくお願いします!



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 1996~1997年頃に結成されたのがテニスコーツ(Tenniscoats)だ。基本的にはさやと植野隆司のふたり組だが、しばしば他のアーティストとコラボレーションを行っている。特に予告はなかったが、この日は名古屋を拠点に活動するゴーフィッシュ(Gofish)ことテライショウタがゲストだった。テライと植野が窓辺でアコースティック・ギターを奏で、穏やかな空気の中ライブが始まった。会場であるビジターセンター&スタンドカフェの2階は、椅子席で30人入れば一杯になるくらいのこじんまりした場所だ。そのため、マイクやアンプを介さずとも楽器の音がしっかり聴こえる。しばらくして、さやが登場。歌いながら階段を上って現れた。やわらか、すべらか、ぐいぐいとのびていく声だ。前述の二人はそれぞれギター1本だし、さやの楽器は赤いボディに黒い鍵盤のかわいらしい鍵盤ハーモニカとヤマハのキーボードのポーターサウンドだし、皆々身軽な演奏スタイルである。


 かくして始まったライヴは、さやが「あんまり決めない感じで」と言っていた通りの時間だった。裸足の彼女が、カーペットの上でステップを踏んでかすかな音をたてる。鍵盤ハーモニカのマウスピースで階段の手すりを叩き、カンカンとした音をたてる。戸棚をノックしたり、置物から音を出してみたりと、偶然に会場に置いてあった色々からも音を鳴らす。


 また、植野もさやも、会場をふらふらと歩きまわる。筆者のすぐ隣だったり、4メートルくらい前だったりと移動していく音を追うと、距離によって聴こえ方が変わっていく。


 こうした3人の演奏に加えて良い仕事をしていたのが、前のほうの席にいた1歳の女の子の観客。気ままなタイミングで演奏に被さる、喃語風だったり「ダンスダンス」「父さぁん」といった言葉だったり、脈絡がないようである彼女の声だ。さやが鍵盤ハーモニカのマウスピースをマイクに見立て、歌ってみない? と促すと、女の子はマウスピースを無言でかぷりと咥える。大人たちの期待を颯爽とスルーする子どもクオリティーに、会場のあちらこちらから笑い声が上がっていた。


 そこにあるのは、音源の再現ではない。鳴っているのは"今、ここ"にある音だ。テニスコーツは偶然を吸収し、音楽に含ませていく。ふたりにとって、演奏が思いもかけない方へ転がっていくことだってあるだろう。コントロールすることをほうり投げる姿勢が、《好みと違う、望みとちがう、おもしろいじゃない、自由なんて必要じゃない》というこの日演奏された2013年の最新7"EP、「違相」の歌詞を体現していた。アコースティックな形式ではあるが、残るのはけっして大人しい印象ではない。テニスコーツのライヴは面白くてしなやかで、そして逞しい。



(松浦みき)

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