VARIOUS ARTISTS『Future City Records Compilation Vol. III』(Future City)

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 魅惑的なシンセ・サウンド。聴き手を揺らすディスコ・ビート。そして、いなたさゆえの人懐っこさ。


 本作は、シンセ・ウェイヴやドリーム・ウェイヴとタグ付けされた作品をリリースし続けているレーベル《Future City》のコンピレーション・アルバムである。以前にレヴューで取り上げたセロレクト/LAドリームズも参加し、全25曲、そのすべてがシンセ・サウンドと80sポップスに向けた愛情で満たされている。


《Future City》自体は、ベータマックスなどをリリースしている《Telefuture》と並び、ここ1年の間で顕在化した80sポップス再評価の潮流において注目されているレーベルのひとつだ。このレーベルからは本作だけでなく、コズミック・サンド「Find Me At The Bay Tonight」プレジャー「Forever」といった秀逸な作品も出ているので、ぜひ1度は聴いてみてほしい。


 さて、『Future City Records Compilation Vol. III』についてだが、先に書いたように全ての曲がシンセ・サウンドを基調としており、ビートはシンプルなディスコ、つまり4つ打ちがほとんど。しかし何よりも興味深いのは、全曲ともベタすぎるキャッチーなメロディーを躊躇なく披露している点だ。言ってしまえば、"古臭い"  "カッコ悪い"  "ダサい" の強烈3連フルコンボを食らってもおかしくない本作だが、それでも"アリなもの"として注目されているのは、流行なり最先端から漏れてしまったとしても、それを享受できる聴き手に届きやすくなった現在の聴環境が関係していると思う。例えば、「それがゴルジェと言うこと」とするゴルジェを気に入った宇川直宏がドミューンでゴルジェの特集番組を放送し、ゴルジェの第一人者hanaliが自身にとってのゴルジェを追求したアルバム『ROCK MUSIC』を発表するなど、半ばやったもん勝ちで始まった音楽がひとつの潮流を作るまでに至ったように、本作もまた、80sポップスのイメージに対して抱く面白さや幻想をヴィジュアルとサウンドで具現化し、受け入れられている。もはや、新しいか古いかといった判断基準は、ネットを介してあらゆる時代の文化にアクセスできるようになった現在では消滅してしまった。このことを本作は鮮やかに告げている。"変わりつつある"のではなく"変わった"のだ。


 と、ここまでは本作の背景に多く言及してきたが、もちろん音楽自体も質の高いものが揃っている。そのなかでも特に面白いのは、やはりセロレクト/LAドリームズによる「Popular」だ。これまでは、イタロ・ディスコが持つダンス・ミュージックとしての機能性にこだわりを見せていたセロレクト/LAドリームズだが、「Popular」では従来の機能的なイタロ・ディスコ路線を維持しながら派手な転調も取り入れたりと、タイトルが示すようにポップ・ソングのフォーマットに接近している。もしかすると、ニュー・オーダーが好きな者ならすぐさま気に入るかもしれない。より多くの人に聴かれるための曲作り、いわば多様化が進んだ今だからこそ生み出せる"新たな普遍性"に近づこうとする意欲をメロディーやリズムで表現している。


 そんなセロレクト/LAドリームズをはじめ、本作に参加しているアーティストたちは、手のひらの上で世界を転がそうと試みる。




(近藤真弥)




【編集部注】『Future City Records Compilation Vol. III』は《Future City》のバンドキャンプからダウンロードできます。

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