VARIOUS ARTISTS 『名古ヤ発☆音源付きフリーペーパー『マシュマロ』vol.11』 (Self Released)

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 マシュマロは三重県在住の女性くどうゆうこが基本、自分でライブを観て「いい!」と思ったミュージシャンに声をかけて作ってきた無料コンピレーションである。かわいらしい葉書サイズのフリー・ペーパー本体には、収録ミュージシャンの写真と自己紹介文が丁寧にまとめられている。名古屋を中心に各地のライブ・ハウス、レコード店等で配布される。配布状況はマシュマロのツイッターで知ることができる。名古屋の狭いシーンはグラスゴーに似た地元感だ。ライヴ・ハウスもレコード屋もレーベルも数少なく、みなどこかでつながっている。マシュマロ参加バンドを中心に、そのことを例示していこう。


 まず目を引くのはHOSHINOKU'S。《EVOL RECORDS》のローファイ・ギター・バンドshort film no.9や、《ondo records》のアコースティック・デュオ里帰りのメンバーを中心にGRANCH、センチメントのメンバー等が加わった7人大所帯、チェロや鉄琴も用いるコーラス・ユニットである。彼らは初音源を提供している。豊橋のシューゲイザー・バンドGangliphoneのメンバーによる関節ネズミには、四日市のオルタナティヴ・バンドbasquiatのメンバーが参加、そのbasquiatも再結成後初となる音源を提供。同じく四日市でライヴ・バーを経営するメンバーらによる鍵盤ギター・ロック、ヤクタタズ。彼らやSICK OF RECORDER、6eyes、マシュマロvol.10参加のThe clubbersは、東海地区のベテラン・ミュージシャンである。


 cinema staffのメンバーからも敬愛される名古屋の「顔」的ギター・ロック・バンドfolt、そしてフリー・ペーパー2you編集柴山の運営するインディー・レーベル《ONE BY ONE》所属のnothingmanの2組は今夏、鶴舞公園で野外イベントを開催している。彼らやviridian、他の《ONE BY ONE》所属のバンド達(iGO、JONNY、明日、照らす等)は、一筋縄ではいかない日々の喜怒哀楽を、ときにユーモアも交えて歌う。彼らを慕うファンは各地にいて、地方遠征を求めるラヴ・コールも絶えない。iGOはsoulkidsや24-two four-、竹内電気解散後のソロ、竹内サティフォと共に再びイベントを行う。


 mudy on the 昨晩を輩出した名城大学の世界民族音楽研究会からはsukida dramas(スキダドラマズ)が参加している。サークル名が最も似合う多文化祭囃子キーボード・パンク・バンドだ。彼らはOTOTOYのプッシュもあり関東でも知名度をのばしつつある。《Lastrum》からデビューする姉弟ユニット、テレポテ、そしてCRUNCH、SWIM SWEET UNDER SHALLOWといったガール・ポップ勢も華やかだ。CRUNCHはリアル・タイム・サンプリング・デュオFU-MUによるリミックス音源を提供している。彼らと親しいHUSH、The welks、海外アーティストを主にリリースする《happy prince》所属のapple lightといったギター・バンド達も過去のマシュマロに参加している。余談だが、最近くどうが気になっているというtigerMosは、《MIDI Creative》からリリースしているユニット、レミ街の荒木による新プロジェクトだ。


 石の上にも3年というが、2013年でマシュマロも実に9年目。vol.0から数えて12冊目だ。過去には企画イベントも開催しているが、10年目にはまた何か面白いことをしてほしいとも思う。しかし製作者のこだわりと純粋な思いがあってこそだろう。変に拡大したり変わったことをするより、彼女の満足いく内容を、長年培ってきたサークルの中でじっくり練り込んでいくことが本筋かもしれない。継続は力なり。マシュマロはしかし、ある意味くどうの手を離れ、名古屋を全国にプレゼンする架空のインディー・レーベルとして機能し出している。現在のネットレーベル全盛のなかで安易に行われがちなことを、丁寧な暖かみのある手作業で10年近く続けてきたマシュマロに敬意を表する。こういった試みと精神性こそ次世代に受け継がれていってほしい。



(森豊和)

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