みそっかす『三次元への回帰』(ドリルおじさんレコーズ)

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 かつて氣志團の綾小路翔は永遠の16歳を名乗り、学ランを着せたら俺の右に出るものはいないと語った。そしてユニコーンやBOφWY、尾崎豊、町田町蔵、果ては在りし日のヴィジュアル系からニュー・ウェイヴ期の海外アーティストまで愛あふれるオマージュをおこなった。フリッパーズ・ギターが、アズテック・カメラやモノクローム・セット、オレンジ・ジュースといったポスト・パンク期のアーティストを慕い日本に紹介したように。音楽性は全く異なるが、氣志團こそフリッパーズ・ギターの精神性を真に受け継いだバンドといえないか。表面的なおしゃれポップの要素を再利用するのではなく、深層に潜む、何でもありの精神を受け継いでいる。


 前置きが長くなったが、愛知のキーボード・ロック・バンド、みそっかすは間違いなくこの系譜に入るアーティストだ。フロント・マンのデストロイはるきちはBLANKEY JET CITY、THE BACK HORN、椿屋四重奏、9mm Parabellum Bullet、アルカラ、0.8秒と衝撃。といったバンドへの憧れを無邪気に口にする。彼らはそういった先達からの影響を全てぶちっこみ、レゲエやハワイアンのようなワールド・ミュージックの要素も混ぜてごった煮に料理する。大時代的で、いい意味で古臭いシンセとギター・リフがアルバム全編を支配している。特に、リード・シングルアメリカと中国と静岡の展開ときたら! サビは王道のヒーロー・ソングなのだが、前後のメロディーの移り変わりがせわしなく先が読めない。ロール・プレイング・ゲームのBGM集を早回しで聴いているかのようだ。


 そしてSEXY DYNAMYTEは、ヒップホップの要素をロックに注入したようなアークティック・モンキーズ以降の感性、擦り切れた靴とロケットはトゥー・ドア・シネマ・クラブを連想する4つ打ちだが、決してそれだけでは終わらない。またここで?という衝撃の展開の連続。彼らは日本福祉大学の軽音部出身で、知多半島にて名古屋のインディー・シーンから隔絶されていた。そういった環境がガラパゴス的な詰め込みJ-POP化を促進したのかもしれない。また、ライヴでの彼らは無様でもキーボードがひっくり返っても力技で盛り上げる。ベースを振り回してステージを破壊しかねない熱演。「俺達はただのみそっかすだ」という地点からはじまった彼らも、ツアーを重ね、関西ではKANA-BOONやキュウソネコカミ、東海ではpalitextdestroyやTheキャンプ、ビレッジマンズストアといった盟友も増えた。渋谷系の傍流のそのまた傍流たる彼らが日本全国をみそまみれにするとき、おしゃれの意味は逆転するかもしれない。


 ここからは余談であるが、くるりの岸田繁を唸らせた意表を突く曲展開とメロディー・センス、それからthe telephonesの岡本伸明も絶賛する踊れるエモ・コア要素は、彼らが持つ最大の武器だ。しかし、そのバランスが今後の課題になるかもしれない。後者に比重を傾けていくと動員は増す一方で、セル・アウトして大量消費の闇に消えていく恐れがある。HMVのインタビューでデストロイはるきちは語る。「(最近のインディーズ・シーンは)多様なようである程度型にハマっている気もします」。言ってくれるじゃないか! ブレイクしたとたんに彼らが時代の潮流とは全くあさっての暗黒舞踏を繰り広げることを切に希望する。デストロイはるきちが10代の頃ハマったというレディオヘッドの『KID A』全曲カヴァー・アルバムを突然無料配信するとかね(笑)。



(森豊和)



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