MGMT『MGMT』(Columbia / Sony Music)

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 ファースト・アルバム『Oracular Spectacular』(07年...えっ、もう6年も前なのか!?:汗&笑)収録曲「Kids」がスマッシュ・ヒットを記録、一躍時代の寵児に躍り出たデュオ・チーム(もしくはバンド)MGMT、3年前の2作目『Congratulations』(10年)は、そんな形でスポットライトを浴びることを明らかに拒絶したようなアルバムだった。エレクトロニクスを多用したサウンドが醸しだすサイケデリック風味が、もともと彼らの音楽の特徴だった。


 後者をぐっと前面に出しつつ60年代のガレージ/フォーク・ロックおよび「セカンド・サマー・オヴ・ラヴ」の前哨となった80年代インディー・ロック(MGMTのメンバー自身の弁によれば、フェルトやオレンジ・ジュースや初期プライマル・スクリーム)を同時に連想させるサウンドが、いい意味での既視感(プロデュースを担当したジジイことソニック・ブームのせいかも:笑)と「現在」ならではの新鮮さを(これまた)同時に漂わせていた前作『Congratulations』から、3年ぶり3作目のニュー・アルバムが、ついにベールを脱いだ。


 ひとことで言ってしまえば、素晴らしいアルバムだ。これまでの彼らの音楽の「いいところ」がすべて入っている。ファースト・アルバムでお世話になったデイヴ・フリッドマンをふたたびプロデューサーに迎え、彼のスタジオに長期間こもって作りあげたというだけあって、実にスポンティーニアス。3作目にして、ついに『MGMT』という自らの名前をアルバムに冠したのも納得がいく。


 アルバム1枚をとおして、実に自然な流れが生みだされている。意識がぶっとんでしまうほどエクストリームなサウンドから、一緒に歌いだしたくなるキャッチーなメロディーまで、すべてが「あるべきところにある」形で収まっている。まるでつづれ織りのごとくすべての意図...いや、糸を交錯させながら。「Kids」のような「キャッチーなシングル・ヒット」を期待すると、肩すかしをくらうかもしれない...という意味で(いろんなものが「混ざってる」分)、20世紀的な見方をすれば「商業的には弱い」かも。だけど、それがどうした? 今は21世紀(笑)。さらに言えば、彼ら自身、学生時代に自主制作したEPのタイトル「We Care/We Don't Care」をひきあいに出して、こんなふうに語っている。「ぼくらはいつだって、対極にあるものが一度に起こるような...そんな状態を望んでいた」(Elactronic Beats 13年9月の記事より)。


「対極にあるもの」といえば、『MGMT』を聴いて、まず感じたのは「この雰囲気、暗い? 明るい? どっちでもあって、どっちでもない!」という戸惑いみたいなもの。「TPOにあわせて音楽を聴きましょう」みたいな「20世紀的にお洒落なBGMを選ぶ姿勢」とは、あいいれない。


 実はつい最近アール・スウェットシャツの新作『Doris』を聴いて、まったく同じことを感じた。彼はフランク・オーシャンを輩出したヒップホップ・コレクティヴ、OFWGKTA(オッド・フューチャー・ウルフ・ギャング・キル・ゼム・オール)のメンバーで、フランク・オーシャンの傑作『channel ORANGE』(12年)にもフィーチャーされていた。そういえば、『channel ORANGE』も(とくにユーチューブにアップされた収録曲の公式ヴィデオを視聴すると)そんな感じだった。


 本作とほぼ同じころに出たアークティック・モンキーズの傑作ニュー・アルバムも、やはり同様の印象を受けた。13年9月に当サイトにアップされたアークティック・モンキーズのレヴューでは、彼らの音楽とヒップホップの共通項について述べられていた。激しく同意。そして、MGMTの音楽も、もちろんヒップホップと通底している。


 本作3曲目「Mystery Disease」では、オディッセイによる70年代ディスコの名曲がサンプリングされている。ただ、そんな部分にこだわりすぎてはいけない。同じ曲には、チャイナという70年代ポップ・ロック・バンド(らしい。ぼくもネットで調べて知った...)の断片も使われている。『MGMT』にはフェイン・ジェイド「Introspection(内省)」のカヴァーも入っている。彼は60年代のあまり有名ではないサイケデリック・ミュージシャンだが、13年7月にスタティックにアップされたアンドリューの言葉によれば、こんな感じ。「サン・フランシスコのレコード屋で働いてる友だちのフランクが、よく曲をつなげて(データで? アナログ・カセットで?)送ってくれるんだよね。だいたい無名だけどかっこいい曲ばかりを集めて。もうずいぶん前のミックスに、フェイン・ジェイドの3曲が入ってた。それ以来、「Introspection」という曲が大好きになっちゃって...」。


 MGMTは以前から、遊び/練習のときに、いろんな人たちの曲をカヴァーしてきた(もちろんライヴでも。11年の来日公演ではクリーナーズ・フロム・ヴィーナスのカヴァーも披露してくれたし、極初期にトーキング・ヘッズやジェネシスをカヴァーしている模様はユーチューブでも見られる。削除されていなければ...)。この曲も、久々に入るデイヴのスタジオに慣れるために演奏したものを録っておいたところ、雰囲気や歌詞の内容がアルバムにぴったり...ということで、あとになってから収録を決めたらしい。


 この比較的クールな姿勢は、90年代のいわゆる「(お洒落な)レア・グルーヴ」的ノリとは、少し異なる気がする。むしろ、80年代前半にヒップホップがまだラップ・ミュージックと言われていたころの「サンプリング感覚」に近いかも。そして、なにより、「今っぽい」。



(伊藤英嗣)

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