hanali『ROCK MUSIC』(Terninal Explosion)

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 ゴルジェと呼ばれる音楽に出会ってから、音楽の聴き方が大きく変わってしまった。ゴルジェといえば、かの有名なGPL(Gorge Public Licence)、「1.タムを使え」「2.それをゴルジェと言え」「3.それをアートと言うな」という3つのルールが欠かせない音楽。この3つのルールを順守していれば、どんな音でもそれはゴルジェになる。とはいえ、このルールでさえ、ゴルジェのオリジネイターDJナンガが、「それぞれ明確な定義はしていない。勝手に解釈して作ってくれ」(※1)と言うように、あらゆる拡張の余地を残し、誰でも含意を書き換えることができる。このようにゴルジェは、それぞれの想像力によってさまざまな表情を見せ、変化し増殖する音楽なのだ。


 そんなゴルジェに触れてからというもの、筆者は"これはロックで、あれはロックじゃない"みたいな、頭が凝り固まった者が嬉々としてやりそうなことがくだらないものに見えてしまう。もちろん、ゴルジェも「それをゴルジェと言え」というように、タグづけから完全に逃れたわけではない。しかしゴルジェは、"◯◯じゃない"と否定したり排除するようなマネはしない音楽であり、このことが、ゴルジェが今も多くの人に驚きを与えつづけている所以なのだと思う。言ってしまえば、すべて個人の想像と解釈に委ねられ、そこから新たな創造がおこなわれる。これが筆者にとってのゴルジェだ。


 本作『ROCK MUSIC』は、日本におけるゴルジェの第一人者hanaliの作品である。だが、タイトルは『ROCK MUSIC』。シーパンクの中心人物とされるウルトラデーモンが、様式を固めるかのように『Seapunk』と名付けたアルバムをリリースしたのとは対照的だ。つまりhanaliは、あくまで自身にとってのゴルジェを本作で追求したということであり、そうすることでゴルジェが型にはまることを巧みに回避している。それゆえタイトルが『ROCK MUSIC』なのだろう。いわばこのタイトルは、本作の音を必ずしもゴルジェと呼ぶ必然性はなく、もっと言えば聴き手がそれぞれ好きなように呼べばいいという寛容な姿勢を、hanaliなりに示したのだと思う。


 そう考えると、本作の掴みどころのなさにも納得がいく。硬質かつ強烈なベースがそびえ立つ「Rebolted Wonder Gorge Ensemble Band」、さらには「Stop The Night Boldering in Kawai」といった、まるでハーケンを打ち込みながら聴き手に迫るような力強いリズムが印象的なトラックも収められた本作のサウンドは、ゴルジェの他にもインダストリアル、ドローン、アンビエント、テクノ、それから忘れてはいけないロックなど、どう呼ばれても不思議と違和感を抱かせないが、それはおそらく本作が、そこに音が存在するという事実のみで成立している作品だからだ。


 ここまでの作品を提示されてしまった以上、聴き手はその圧倒的なまでの音にただ耳を傾け、体感するだけでいいのではないだろうか? 言語やスタイルを軽々と飛び越えてしまう膨大なパワーが、本作にはある。



(近藤真弥)



※1 :『ROCK MUSIC』に同梱されているライナーノーツ内で読めるDJナンガのインタヴューより引用。

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