WHITE WHITE SISTERS「SuperNeutral」(micro kingdom)

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 white white sistersの音には確かな輪郭がある。触れるグルーヴがある。電脳空間だけに存在する音ではない。メイン・コンポーサーの紡ぐサウンドと、ヴィジュアル・プロデューサーの描くヴィジョンが高次元で溶け合い結びついている。ギター、プログラミング、ボーカルの松村勇弥、彼のステージでの立ち居振る舞いは、いにしえのロック・スターを想起させる。生ドラムと相まってまるでマーク・ボランみたいだ。VJ田嶋紘大が演奏に同期させ展開する映像はシンプルで、音の邪魔をせず、主張せず、音のイメージをふくらませて想像力を刺激する。彼らは2013年7月、自主レーベル《micro kingdom》を設立。ライブ会場限定DVDシングル「SuperNeutral」をリリースした。


 表題曲「SuperNeutral」ではドラムと電子音が衝突し、炸裂し、火花が散り、しだいに拡散していく。音と光の波に溶け込みながらも力強いヴォーカルは聴く者の精神浄化を招く。松村の曲に寄りそう田嶋の映像は、無機質な線と面の組み合わせから架空の都市を構築していく。松村のルーツであるブンブンサテライツやスーパーカーレディオヘッド、それにダフト・パンクフェニックスLCDサウンドシステムといった先人の影響が素直にダイナミックに反映されている。つまり爽快にかっこいいのだ。


 一方でもう1曲の「no where//now here」は田嶋の映像から受けるイメージを松村が曲に投影する形で制作されたという。どこか懐かしい雰囲気の部屋。中空にアメーバ状の物体が浮かんでいる。そこから吐き出されたのかどうか分からない。ギター、そして寝そべる松村が突如現れる。別の惑星、ひょっとしたら別の次元かもしれない。地球とは違う物理法則が働いている。家具が浮かび漂っていく。古いハード・カヴァーの本、スタンド、椅子、ヤシの木、電話、よく見ると椅子には包丁が刺さっていて、土星も流れてくる。そんな部屋で囁かれるのはどこか優しく艶かしい歌。砂漠にしたたる水滴のようだ。この2曲は彼らだけの小さな王国(マイクロ・キングダム)を表現している。だから映像が先にあるべきでDVDシングルとなった。ライブ会場限定なのは親密さの反映で、きたるべきアルバムへの呼び水だ。


 彼らが注目されたきっかけは2010年のサマーソニック。一般公募ながらメイン・ステージのひとつ、ソニック・ステージに出演を果たしたことだった。その後彼らは2011年にSXSWを含むアメリカ・ツアー敢行。2013年にはザ・ウィップ来日東京公演をサポートしている。前後してサカナクション、ストレイテナー、LAMAKIMONOSDE DE MOUSEらと共演を果たす。2012年には彼らが敬愛するナカコーも参加のリミックス・アルバムをリリースした。先ごろ新ドラマー平沼喜多郎(ex.caroline rocks)が加入したが、彼らは実に奇妙な成り立ちと編成のユニットだ。南山大学軽音楽部(cinema staffのメンバーが在籍したアメ研とは別サークル)で結成。当初は松村にベース、ドラム石井一正の3人編成でベースがヴォーカルをとり田嶋はまだ加入していなかった。まもなくベースが脱退。かわって松村がヴォーカルを取り、VJも加わって名古屋のライブ・ハウスに出演し始める。彼らを気に入った田嶋が愛知県立芸術大学の学園祭に松村のソロ・プロジェクトMotion Picture Soundtrackを招いたのを機にふたりの交流が始まる。前任のVJが脱退後しばらくは松村と石井の2人編成であったが、満を持して田嶋がVJとして加入し3人編成となる。石井脱退後はしばらくサポート・ドラマーを迎えていた。こうやって書き出してみると活動期間の割に紆余曲折を経ているようだ。


 余談だが田嶋は学生時代に組んでいたバンドで、大学の先輩である出戸学のバンド、オウガ・ユー・アスホールと共演している。出戸の故郷長野でのホーム・パーティーにおいてだ。それから数年後に今度は名古屋クラブダイアモンドホールにてwhite white sistersのVJとしてオウガと共演することになるのだから面白い。また先日《P-VINE》から新譜を発表したYOK.も田嶋の先輩であり、《THISIS(NOT)MAGAZINE》から初音源をリリースしたジョセフ・アルフ・ポルカは逆に田嶋の最も近しい後輩に当たる。


 海外でもハード・コア出身のラップ・トップ・アーティストといった一見変わった経歴のミュージシャンは少なくない。現在の外見では分からない、その人が歩んできた道すじは音楽性に奥行きを与える。全てのアート・ワークを担当する田嶋によれば、来年リリースするアルバムは視覚的に凝ったものにしたいらしい。以下は私の提言だが、音楽的にも例えば田嶋メインでの作曲、他ミュージシャンとのコラボレーション、ラッパーのフィーチャリングなどまだまだできることは無数にあるはずだ。このユニットの肝の一つは、ふたりの紡ぐ映像、音像の持つ「他者を拒まない受容性」にある。だからこそ様々な可能性が脳裏に浮かぶ。



(森豊和)

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