VARIOUS ARTISTS『Music Alliance Pact August 2013』(The Pop Cop)

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 世界はつながっている。狭い。Music Alliance Pact(MAP)は世界30カ国以上の音楽サイトが集まって素晴らしい曲をフリー・コンピ配信する企画である。英ガーディアンも2013年4月まで約2年間参加し普及に協力している。主催国であるスコットランドの音楽サイトThe Pop Copにて過去のアーカイブもまとめて聴ける。


 Music Alliance Pactとは直訳すれば音楽同盟協定。世界各国の良質なインディー・ミュージックを紹介し交流を促進するための決め事。頭文字をとってMAP(地図)だ。音楽による世界旅行という意味にもとれる。異国語の不思議な響きに惹かれたり、友人の母国だから興味を持つこともあれば、その国特有の事情、地理、歴史に感動することもあるかもしれない。言葉の壁? 音楽は世界共通語だ。フィーリングをたやすく伝える。この企画で紹介された日本勢にはMoscow ClubOKLobbyLLLL、Buddy Girl And Mechanic(オウガ・ユー・アスホールの『Homely』に語りで参加)といったクッキーシーンでも以前紹介されたミュージシャンが多数含まれている。


 さて、2013年8月の紹介ミュージシャンに話を移す。世界各国の特色に加えて、全体的にサイケ、ポスト・ロック色が強い面子となっている。ではThe Pop Copでの紹介順に記していく。マスト (スコットランド)はグラスゴー出身の癖になるドリーミー・マスロック。パブロ・マローリー(アルゼンチン)はミニマル・サイケ・フォーク。イスク(オーストラリア)は伝統的なパブ・ロックとポスト・パンクの融合。モーア・デュー・アンド・リッチャー(オーストリア)は軽やかでラウンジ向けなサマー・エレクトロ。イーオンズ(カナダ)は厳しい北風のようなメロディーとリリック、それをしのぐ深い情熱を内に秘める。メリエ (チリ)はグリズリー・ベアを連想するハーモニーが美しい荘厳なポスト・ロック。シュトマート・トリオ(コロンビア)はメランコリーな響きのポスト・ロック。オーノオノでも演奏していたプレ・ビー・アン(デンマーク)は80年代にビートルズが活動していたら? というサウンド。チノ・シング(ドミニカ共和国)は打ち砕かれた希望、熱帯の幻想とレゲエ・ビート。ジョダマッサ(エクアドル)は熱い強固なラテン・ビート。パール・シーズ(イングランド)は小さな港町が生んだサイケなダーク・ロックだ。ブラッド・パビロン(エストニア)は不穏なサンプリング・ビート。アンナ・アンド・ミキ(フィンランド)は東洋の影響を感じるアコースティック・ソング。カット・オフ(ギリシャ)はアセンズのファスト・コア・バンド。ファー・トラベル・ミュージック(インド)はプログレッシブ・ロックからダブステップへと切れ目なく続く。MGMTの前座に抜擢されたサジャマ・カット(インドネシア)はローファイでシンプル、繊細で美しいメロディー。イディオット・ソングズ(アイルランド)はドストエフスキーの現代的解釈、その時代の室内楽のよう。M+A(イタリア)はフェニックス・ミーツ・ホット・チップ、遊び心溢れる洗練されたダンス・ポップ。芳川よしの(日本)は有名アーティストのリミックスも手がけるエレクトロ・プロデューサー。ティノ・エル・ピングイノ(メキシコ)は人種差別を皮肉とユーモアを混ぜてラップする。アース・マーク・ツー(オランダ)はジャコ・ガードナーの幼馴染みでゾンビーズ、シド・バレット、ニルヴァーナに影響されたネオ・サイケデリア。スペース・ビー(ペルー)はアラビア音階とヴァイオリンを用いたクラシック・サイケデリア。ラグーナ・ピアンカ(ポーランド)は青春の疾走感、透明感を宿す。中盤のピアノ・ソロは初期フジファブリックを連想させる。ピクシ-・アヴィーオ(ポルトガル)は激しいリフが美しいメロディーを徹底的に切り刻む逆上のロック。ラス・アベジャス(プエルトリコ)は夏の高速回転オールディーズ・ダンス。ステューア・デ・メア(ルーマニア)は異国情緒漂う折衷インスト。プログレ、ダブ、サイケにジプシー・ミュージックをミックス。シアター・エイト(韓国)は漢江の橋にちなんだみんなの歌。ラ・プレッサ(スペイン)は80年代エレ・ポップに3人のラップが乗るダンス・ミュージック。シャーク?(USA)はブルックリンのバンド。キャッチーなフックやグルーヴが気だるい色気あるヴォーカルと共にザクザク迫る。ラヴ・デュバン(ベネズエラ)は伝統的かつワイルドなロック・スタイルだ。


 ざっと駆け抜けてきたが、ひたすら武力、経済力を高め隣国を威嚇するより、こういった文化的交流のほうがよほど素敵でマシなことに思える。タバコジュースというバンドの松本敏将がかつて語ったように、同じ歌を歌う違う国の二人が殺しあう必要はまったくないのだから。



(森豊和)




【編集部注】本作はThe Pop Copのサイトでダウンロードできます。

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