SELLOREKT/LA DREAMS『Avenue Electric』(Self Released)

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 アンディー・ストットの『Luxury Problems』は、インディー・ミュージック側から更新されたドローン/アンビエント、再評価され盛り上がるインダストリアルなどの禍々しい潮流を巻き込みながら、チルウェイヴ以降にドリーミーなカーテンを纏いだしたベッドルーム・ポップにとっての劇薬として機能した。「Numb」から最後の「Leaving」まで、聴き手を甘美な悪夢に導く高い誘眠性が貫かれている。


 そしてその悪夢は、チルウェイヴ以降のドリーミーなカーテンに守られたリスナーやベッドルーム・アーティストを目覚めさせるための、いわばファンタジーに身を沈める者に突きつけるリアリズムとして、ある種の冷血さを内包するものだった。その冷血さはピート・スワンソンの『Punk Authority』にも引き継がれ、多くの者が大鎚で頭を揺さぶられ、やっとチルウェイヴ以降の夢から覚めつつある。


 しかし、そうした流れに逆らうかのような音楽がここ最近増えている。それが以前にレヴューを書いたベータマックス『Sophisticated Technology』などに代表される《Telefuture》周辺の作品、そして本作『Avenue Electric』だ。


 本作を作り上げたセロレクト/LAドリームズは、バンドキャンプ上でその名もズバリ『Nostalgia』を2012年8月に発表してから、かなりのハイペースで作品をアップしつづけている。筆者の目にはその姿が焦燥として映り、まるで大切なナニカを失わないために抵抗しているかのようにも見える。去年まではスーパーファミコンのゲーム・ソフトを思わせるジャケット・デザインが多かったものの、今年に入ってからは映画のポスターみたいなジャケットが増え、80sポップの要素が色濃くなった。本作を聴いて思い浮かんだのは、ジョー・ジャクソンの大ヒット曲「Steppin' Out」、それから『Mystery』期のラー・バンドだったりする。


 本作はバンドキャンプでダウンロードできるアルバムだが、そこでつけられているタグを見ると、ドリーム・ウェイヴ、アウトラン、シンセ・ポップ、シンセ・ウェイヴなど。妥当だとは思う。しかし筆者は、ここにイタロ・ディスコを加えたい。本作に収められたほとんどの曲におけるリズムやベース・ライン、シンセの重ね方はイタロ・ディスコを想起させるからだ。


 それにしても、またもやイタロ・ディスコとは・・・。先日《Telefuture》から「Summer Love EP」というモロにイタロ・ディスコなシングルがリリースされたばかりだが、ソフト・メタルズの『Lenses』にしろ、ここ最近のインディー・ミュージックはこの手のサウンドが多い。ピエール瀧は、電気グルーヴのYouTubeチャンネルにて配信されている番組のなかで、ドイツにもイタロ・ディスコのような音があると語ったあと、「イタリアってドイツより見てる未来が手前」と述べているが、いわばそうした近未来的な雰囲気がいま求められているのだろうか?


 筆者からすると、去年あたりから急に浮上してきた潮流に見え、それゆえ"なぜいまイタロ・ディスコで『Nostalgia』なのか?"という疑問に対する明確な答えは持っていない。しかし、それでも言えるのは、"昔は良かった"みたいな懐古主義者のしみったれた"ノスタルジー"が本作にはなく、こうした"ノスタルジー"を抱くことで生じる情感、いわゆる"ノスタルジック"そのものに興味が向けられているということ(これは『Nostalgia』も同様で、そういった意味でこのタイトルは矛盾しているが、おそらくアイロニーだと思う)。それゆえ本作は、過去を滲ませながらも、少し遠く、それこそ"近未来"を見つめるオプティミズムが渦巻いている。


 ダフト・パンクの『Random Access Memories』は、少々痛々しい哀愁を漂わせているせいもあってなかなかコミットできなかったが(それでも惹かれてしまう魅力を内包しているが)、本作にはそんな哀愁の代わりに、チープながらもキラキラとしたポジティヴィティーが詰まっている。雑なフェード・アウトなど、もう少し曲全体のディテールに気を配ったほうがいいのでは? とツッコミたくなる部分もあるにせよ、メタリックながらも温度を感じさせる本作のシンセ・サウンドは確かに心地良く、この点だけでも多くの聴き手を惹きつけることができる。少なくとも筆者は、虜になってしまった。



(近藤真弥)




【編集部注】『Avenue Electric』はセロレクト/LAドリームズのバンドキャンプでダウンロードできます。

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