DJ HELL『Kern Vol.2』(Tresor)

| | トラックバック(0)
DJ HELL『Kern Vol.2』.jpg

 DJヘルといえばやはり、エレクトロクラッシュのイメージが強いのだろうか? 確かに彼は《International Deejay Gigolo》の主宰として、ヴィタリック「Poney EP」、フィッシャースプーナー「Emerge」、ティガ『American Gigolo』をリリースし、エレクトロクラッシュの盛り上がりに一役買っている。


 とはいえ、DJヘルはこれらの作品をエレクトロクラッシュとしてリリースしたわけではい。あくまで自身の音楽的嗜好に従っただけであり、それがたまたま時代と交錯したに過ぎない。現にエレクトロクラッシュの盛り上がりが落ち着いても、《International Deejay Gigolo》は相変わらずDJヘルのフェティシズムが滲み出たリリースを続け、また、DJヘル自身も《Stereo Deluxe》から発表したミックスCD『Coming Home』にて、DAFやクラフトワークを選曲するなど、ルーツ回帰なセットリストを披露している。


《Tresor》が新たに始めたミックス・シリーズ"Kern"。前回の『Kern Vol.1』ではDJディープをフィーチャーし話題となったが、今回はDJヘルである。これまた興味深いチョイスだが、アンダーグラウンド色が強いというシリーズの特徴に沿いながらも、自身の特徴であるストイックな享楽主義を見事に打ち出しているのだから、今回のチョイスは正解だったと言える。


 基本的には、先述したルーツ回帰の流れにありながら、ここ数年ふたたび注目されているインダストリアル・テクノの潮流にも目配せをした、鋭い審美眼が光るミックスに仕上がっている。また、レコンダイトやヨナス・コップなどの新しめなアーティストをピックアップしながら、ダーク・コメディー、インナー・シティーといったクラシックも混ぜてきたのは、若いリスナーに紹介する意図があるのかもしれない。こうした点からは、数多くの音楽で溢れ、玉石混淆となっている状況のなかから優れた音楽を掬い上げようとする気骨が窺える。


 そして何より、繰り返し何度も聴けるように工夫された流れ。例えば、ザ・ホラリスト「Wet & Shiny(Hell's 2013 Rework)」に代表される声ものトラックを入れるタイミングは本当にお見事。こうしたコアなクラブ・ファンだけでなく、家でダンス・ミュージックを聴くことが多いリスナーも楽しめるよう心掛ける配慮は、ティガの『Non Stop』に通じるものだ。



(近藤真弥)

retweet

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: DJ HELL『Kern Vol.2』(Tresor)

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://cookiescene.jp/mt/mt-tb.cgi/3660