ハラフロムヘル「13歳」(Self Released)

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 これはちょいと不思議な音楽だ。「エイプリル」では、パンキッシュなギター・サウンドが前面に出てきたかと思えば、「クラスメイト」のように、童謡に近い心地よい譜割りとキャッチーなメロディーが聴き手を惹きつけるアンセミックな曲もある。一聴しただけですぐに覚えられるポップ・ソングも書きながら、「遠くへ行きたい」などは間で聞かせる曲展開を見せており、こうしたワンパターンではない豊穣な音楽性もハラフロムヘルの魅力だ。


 バンドのホームページには、「「パンクバンドをやろう。」という意思のもとサポートベースを加えた5人での活動を開始する」と書かれているが、筆者からすると、ハラフロムヘルの音楽はニュー・ウェイヴ、もっと正確に言えば、細野晴臣がプロデュースしたこともあるチャクラの要素を感じる。特に、まるで変臉のように次々と場面が移り変わる歌詞を、伸びのある奔放な歌声でもって乗りこなすタテジマヨーコの姿は、チャクラのヴォーカルである小川美潮を想起させる。


 さらに歌詞はというと、これまたとてつもない飛躍を披露するものとなっていて、さながらシュルレアリスムである。例を挙げていけば、《毛細血管ちぎれそう 細胞分裂はじまりそう》(「エイプリル」)、《歌えよ歌え 声高らかに 頭のアンテナ引っこ抜け》(「遠くへ行きたい」)、《ここからは戻れない 宇宙のゴミになって》(「東京昆虫博物館」)などなど。全体的に、どこかへ飛び出そうとする願望が現出しているように見える。


 こうした言葉選びのセンスから察するに、歌詞は語感を重視しているのではないだろうか? もちろんどこまでもナンセンス、それこそ電気グルーヴの歌詞とまではいかないが、それぞれの言葉はバラバラに見えるのに、なぜかひとつの物語を聴き手なりに思い浮かべることができるのは、帰納的に言葉を積み上げ、聴き手の想像力を巧みにいざなう世界観が終始貫かれているから。


「13歳」というタイトルを掲げた本作は、25歳となった筆者からすると懐かしの青春時代、特に「クラスメイト」や「アイスランド成東」などはその当時を思い出させる歌なのだが、そんな「13歳」というタイトルには収まりきれない狂気を時折感じさせるのも、本作の興味深い点であり、面白いところだ。先述のどこかへ飛び出そうとする願望もそうだが、その願望が現実逃避に振り切れていない、いわばイライラは積もっているが、それをギリギリのところで我慢しているがゆえの支離滅裂さ。それが本作では狂気となって現れているのかもしれない。このままでも十分に聴きごたえのあるバンドなのは間違いないが、今後その狂気をどう扱い表現するかによって、バンドのサウンドと世界観はがらりと変わるはず。どんな方向性を目指すにしろ、この先が楽しみなバンドであるのは確かだ。



(近藤真弥)




【編集部注】「13歳」はハラフロムヘルのライヴ会場で購入できます。

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