August 2013アーカイブ

2013年8月28日

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2013年8月28日更新分レヴューです。

【合評】森は生きている『森は生きている』
2013年8月28日 更新
WALTON『Beyond』
2013年8月28日 更新
cinema staff「Great Escape」
2013年8月28日 更新
NANCY VIEIRA『No Ama: そよ風のリズム、愛の歌』
2013年8月28日 更新

2013年8月26日

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2013年8月26日更新分レヴューです。

【合評】TRAVIS『Where You Stand』
2013年8月26日 更新
DJ HELL『Kern Vol.2』
2013年8月26日 更新
WHITE WHITE SISTERS「SuperNeutral」
2013年8月26日 更新
VAN DYKE PARKS『Super Chief 〜 Music For The Silver Screen』
2013年8月26日 更新
MARIANA BARAJ『Sangre Buena』
2013年8月26日 更新
DEERHUNTER 『Monomania』
2013年8月26日 更新

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音楽配信サイトオトトイ傘下TV♭(フラット)で絶賛放送中、テレヴィジョン・クッキーシーン。「最新のものと昔のものを適当に混ぜつつ、時代を超えていい曲(いいミュージック・ヴィデオ)をがんがんかけていく!」というのが基本コンセプト。


全10曲程度で合計35~55分くらい(昔のLP1枚分くらい)のセットリストが、基本「隔週」木曜日22時に更新され、時間枠いっぱいに何度もリピート・ストリーミング放送中です!


初回放送時、最初にセットリストが一巡するくらいまで、今回のセレクター近藤がツイッターの個人アカウントから軽く(?)曲紹介をおこなう予定ですが、もしなにか緊急の予定が入ってしまったらできないかも...。


8月22日(木)~9月4日(水)に放送される第31弾は、近藤が「インディーにまで及んでいるシカゴ~アシッド・ハウスの流れ」というテーマ...ノリでまとめた、全10曲。


ちなみに、もうひとりのセレクター伊藤は、一応「静止画像はなるべく避ける」という縛りを作ってこれまで選曲してきたのですが、今回、近藤はそれをぶっちぎり、すべて静止画像ばかり。うーん、「若い」ね(あっ、意味がよくわからない? すみません:汗)!


昨年から今年にかけての新しいヴィデオが3曲、90年代ものが1曲、80年代ものが6曲というバランスになっています。おお、若いのに(ちなみに彼はまだ20代なかば)、古い曲も多い(笑)。


放送日時は以下のとおり。


8月22日 (木) 22:00-24:00 ※初回放送

8月23日 (金) 18:00-20:00 ※再放送(以下同)

8月24日 (土) 20:00-22:00

8月25日 (日) 22:00-24:00

8月26日 (月) 13:00-16:00

8月27日 (火) 16:00-18:00

8月28日 (水) 9:00-11:00


8月29日 (木) 22:00-24:00

8月30日 (金) 18:00-20:00

8月31日 (土) 20:00-22:00

9月1日 (日) 22:00-24:00

9月2日 (月) 13:00-16:00

9月3日 (火) 16:00-18:00

9月4日 (水) 9:00-11:00


なお、第32弾の初回放送は9月5日(木)22時スタート予定。


よろしければ、是非!


2013年8月21日19時45分(HI)

2013年8月21日

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2013年8月21日更新分レヴューです。

VARIOUS ARTISTS『TANUKINEIRI DRINK SAMPLER』
2013年8月21日 更新
ハラフロムヘル「13歳」
2013年8月21日 更新
BECK「I Won't Be Long」
2013年8月21日 更新
JAIPUR KAWA BRASS BAND『Dance Of The Cobra』
2013年8月21日 更新

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010FRANZ FERDINAND『Right Thoughts, Right Words, Right Action』(Domino Hostess ).jpg

 女の子が踊り、軍人も涙するダンス・ミュージック。疾走感と懐かしさの奇妙な同居。祭囃子や80年代SFのテーマ曲みたいなシンセに、つんのめり痙攣しながら疾走するギター・カッティングとビートのいびつな調和。引きこもりの青年が転じてヒーローになる、少年漫画の王道を行くような物語性。オーケー、言ってしまえば今回もそれだけ。フランツ・フェルディナンドはどこまで行ってもフランツ・フェルディナンドなのだ。


 トーキング・ヘッズやロキシー・ミュージックをよく引き合いに出されるが、この独特な感触は、他の人が見過ごすような細かいことを、延々と考え続けた末に行き着いたシンプルさかもしれない。難しいことを簡単にまとめたともいえる。中心人物のアレックスはNMEのインタヴューで、スコットランドの作家アラスター・グレイの小説『Lanark』が本作のテーマとして重要だったと語っている。内向的な人間が社会と向き合い自身をさらけ出す勇気を持つことについての壮大で引き込まれる物語だ。クッキーシーンのインタヴューでは、僕らの曲がアニメ映画『ピューと吹く! ジャガー いま、吹きにゆきます』に使われたのは最高にクールだとも発言していた。主人公ジャガーは、音楽で世界を支配しようと企む秘密結社で育てられ、超常的な音楽の才能と引き換えに感情を無くし自分の殻に閉じこもっていた。しかし育ての親による捨て身の愛情のおかげで彼に感情が戻る。これはアレックス自身の過去にあてはまりはしないか? 江口寿史の 『ストップ!! ひばりくん!』でデヴィッド・シルヴィアンと忌野清志郎が言及され、冨樫義博の『幽遊白書』では戸川純が後半の雰囲気を示す重要なキーワードとして使われていたように、音楽とある種の物語は相互補完する。


 またアルバム・タイトルは仏教における八正道という教えに影響されたという。快楽と苦行の両極端を否定した適切な行い(Right Action)のことだ。鳥山明の国民的漫画『ドラゴンボール』に例えるのを許してほしい。孫悟空とベジータは最後の戦いに備え精神と時の部屋という亜空間で修行する。ひたすら筋力増強を唱えたベジータの態度はフランツでいえば2作目に相当する。一方で特別なことはしない、基礎鍛錬が大事だと考えた孫悟空は3作目の考え方に近い。3作目『Tonight』では心臓の鼓動である80前後のBPMを意識し、再び楽曲の基本構造を強化した。その結果、何をやってもフランツになる完璧な自信と基礎体力を得た。アレックスは言う、アティチュードが大切だ。過去のミュージシャン、地元の友人達から様々なことを吸収した。彼らへの敬意を忘れない。人々を食い尽くそうとする魔人を、全世界の仲間から集めた勇気の元気玉で討ち果たした孫悟空のようだ。スコットランド、グラスゴーの音楽シーンにおいて同胞や後輩と影響を分かち合っている。彼らはとても博識で理屈っぽいことを考えるけれど、最終的には本能と勘を優先させる。それは理性に裏打ちされている。自分はしょせん道化だと言い切れる人間は信用できる。「ユー・ウィル・ビー・オーライ!」、アレックスは宣言する。君もきっと大丈夫だ、と。



(森豊和)

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Rhucle.jpg

 Rhucleの作品は、音楽と呼べるぎりぎりの場所でリスナーを誑かすように華麗に舞っている。いや、もっと正確に言えば、些細な日常音と普段われわれが聴こうとして聴く類いの音楽には境がないのだと言っている。波も、雑踏も、映画のワンシーンも、美しいヴァイオリンの旋律も、毒にも薬にもならないポピュラーミュージックの破片も、彼にとってはすべて同じ"音"なのだ。


 しかしこう書くと、彼の作品はジョン・ケージの表現行為やブライアン・イーノのアンビエントのようだが、そうではない。両者の哲学は、本来は音楽の外側にあったものを内部へと侵蝕させる芸術であっただろう。それによって音楽の範疇はたちまち肥大した。


 Rhucleの行為はその逆である。今まで音楽と呼ばれていたもの、あるいは音楽となり得た音たちを、外へ外へと押しやり音楽から遠ざけようとしている。それは、音楽に疲れた一人の人間の拒絶反応ともとれるし、無邪気に音楽を楽しめていた二度と戻れない時代への憧れともとれる。


 無邪気に音楽を楽しめていた時代――。


 "群衆協奏曲"と名付けられた4曲目「Throng Concerto」では、流麗なヴァイオリンの演奏を遮るようにまったく関係のない効果音や邪魔なノイズが挿入される。妨害は曲が進むにつれて増してゆき、最終的に人間の喋り声が支配して次のトラックへ移ってしまう。まるで、ひとつの曲に集中しようとしても集中しきれない現代人の散漫な意識を、音楽が、音楽らしきものへと成り果てる様子で表現しているかのようである。


 40秒ほどの2曲目「Cosmic Chorus Through The Over Head」では、小鳥のさえずりをバックに馬が駆け抜ける足音とフューチャリスティックで淡白な女性の歌声が響くのみで、そこにあるのは種の無常観と、音に対する幾ばくかの冷めた視線だ。彼は何も主張しない。叫べとも楽しめとも言わないし、踊れとも、悲しくなれとも言わない。そんな真っ白な(というより真空な)気分で聴かされる7曲目「Hawaii's Guest Room "Chicken's Boiler"」の、このあっけらかんとしたハワイアンの中身の無さったらない。この無味乾燥のハワイアンに象徴される、音を心から楽しまない冷徹なアティチュードが、この作品全体を覆う空気となっている。どんな情感にも迎合しない、どこか真理を悟ってしまった人の心を覗きこむ望遠鏡のような音楽、とでも言うべきか・・・。


 しかし、こんな調子で流れる10トラックの後に待っている「The Night Cataract」に、筆者は不覚にも心を奪われてしまった。こんなにも楽観的で、超現実的で、ロマンティックで、根拠の無い過度の幸福感に癒される自分自身に驚いた。これが自分の求めている音なのだろうか、これが聴きたかった音なのだろうか?


 人は、どんなに喉から手が出るほど欲しかったものでも手にしてしまった瞬間に価値を見出せなくなってしまう時がある。音楽を外へ外へと遠ざけ、あとに残ったユメかウツツかもわからない白昼夢のような音の残像に、Rhucleは、そして我々は、救いを求めている。


 『The Space Theory Of The Dreams And Phantasms In A Small Box』="小さな箱の中の夢と幻想の空間理論"


 Rhucleはこのアルバムにそんなタイトルを付け、彼の求める"夢と幻想"を300円のカセットテープに収めた。冒頭とは逆の結論を書こう。この小さな箱の中には真の意味で"音楽"が詰まっている。そしてもう一度ひっくり返す。


 Rhucleの考える本当の音楽とは、何だろう。



(荻原梓)




【編集部注】『The Space Theory Of The Dreams And Phantasms In A Small Box』のデジタル・ヴァージョンはRhucleのバンドキャンプでダウンロードできます。

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STEVEN TANG『Disconnect To Connect』.jpg

 1980年、アメリカで『アルタード・ステーツ/未知への挑戦』という映画が公開された。ケン・ラッセル監督によるこの映画は、アイソレーション・タンクの開発者である脳科学者ジョン・C・リリーがモデルだとされており、劇中にはアイソレーション・タンクを使用するシーンもある。おおまかなストーリーは、ウィリアム・ハート演じる精神心理学者エドワード・ジェサッブが生命の根源を探るというもので、その過程で幻覚剤を用いた実験もおこなうため、ヴィジュアル的にエキセントリックなシーンが頻出する。


 こうしたドラッギーな映像演出は、1996年に公開され話題となった『トレインスポッティング』でも見られるが、『トレインスポッティング』の監督であるダニー・ボイル、そして先述のケン・ラッセルは共にイギリス出身の人物。イギリスといえば、エクスタシーというドラッグを広く普及させるキッカケとなったセカンド・サマー・オブ・ラヴの震源地。なぜイギリス人は、生命の根源だったり本質に近づこうとしたがり、あるいはこれらの要素が多分に含んだ表現を多く生み出すのか? こうしたことは、日本で生まれ育った筆者には完全に理解することは難しいが、"生命"を追究する過程でコミュニケーションに強い興味を持ち、その取っ掛かりとして喜怒哀楽などの感情、さらにはセックスといった事柄に触れるのは自然だと思う。実際『アルタード・ステーツ/未知への挑戦』には、ケン・ラッセルの手によってかなり歪になってはいるものの、エロティックな性愛描写が頻繁に登場する。キス、愛撫、なんでもいいが、生活を営むうえで多くの人がするであろう愛情表現は、人という生き物の本質に近づくための入口なのかもしれない。


 シカゴに住むアジア人アーティストのスティーヴン・タンによって作られた本作『Disconnect To Connect』は、ハンブルクに拠点を置き、ヨーロッパのハウス・シーンで絶大な存在感を放つレーベル《Smallville》からリリースされていることもあり、ラリー・ハードやドリーム・2・サイエンスの流れを受け継ぐ、ロマンティックな雰囲気漂うハウス・ミュージックが収められた作品となっている。スティーヴンは、1998年の「Windy City」を皮切りに上質なシングルを作り続けており、アーティストとしてのキャリアは10年以上になるが、なんと本作がファースト・アルバムだそうだ。しかもResident Advisorのニュースによると、全収録曲のうち「Interstice」「It's Perceived As Sound」「Brink Of Dawn」の3曲は、1999年~2000年頃に完成したトラックらしい。とはいえ、本作においてこの3曲が古びた印象をあたえることはなく、むしろそのコールドスリープ的な過程を経たことによって、本作にSFチックな壮大さをもたらす重要な曲となっている。


 それぞれオープニング(「Interstice」)、6曲目(「It's Perceived As Sound」)、そしてラスト(「It's Perceived As Sound」)と、アルバム全体の流れを司るリンクマン的な位置に収録されているのも見逃せないポイントだろう。そうすることで本作は、我々が身を置いている時間軸から軽々と逸脱しているからだ。森は生きている『森は生きている』もそうだが、本作もまた、どの時代に生まれた音であり作品なのか、聴き進めていくうちに曖昧となり、終いにはわからなくなる。それは結果として、恍惚感で覆われたサウンドスケープにつながり、本作におけるまどろむようなシカゴ・ハウスのリズムが生々しく、さながら生きた心臓の鼓動みたいに思えてくる。


 そういった意味で本作は、良質なハウス・ミュージックが詰まったアルバムという枠から遥かに飛躍し、聴き手にある種のフロー体験をもたらす変性意識的アルバムとして、妖しくも甘美な魅力を放っている。



(近藤真弥)

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SELLOREKT/LA DREAMS『Avenue Electric』.jpg

 アンディー・ストットの『Luxury Problems』は、インディー・ミュージック側から更新されたドローン/アンビエント、再評価され盛り上がるインダストリアルなどの禍々しい潮流を巻き込みながら、チルウェイヴ以降にドリーミーなカーテンを纏いだしたベッドルーム・ポップにとっての劇薬として機能した。「Numb」から最後の「Leaving」まで、聴き手を甘美な悪夢に導く高い誘眠性が貫かれている。


 そしてその悪夢は、チルウェイヴ以降のドリーミーなカーテンに守られたリスナーやベッドルーム・アーティストを目覚めさせるための、いわばファンタジーに身を沈める者に突きつけるリアリズムとして、ある種の冷血さを内包するものだった。その冷血さはピート・スワンソンの『Punk Authority』にも引き継がれ、多くの者が大鎚で頭を揺さぶられ、やっとチルウェイヴ以降の夢から覚めつつある。


 しかし、そうした流れに逆らうかのような音楽がここ最近増えている。それが以前にレヴューを書いたベータマックス『Sophisticated Technology』などに代表される《Telefuture》周辺の作品、そして本作『Avenue Electric』だ。


 本作を作り上げたセロレクト/LAドリームズは、バンドキャンプ上でその名もズバリ『Nostalgia』を2012年8月に発表してから、かなりのハイペースで作品をアップしつづけている。筆者の目にはその姿が焦燥として映り、まるで大切なナニカを失わないために抵抗しているかのようにも見える。去年まではスーパーファミコンのゲーム・ソフトを思わせるジャケット・デザインが多かったものの、今年に入ってからは映画のポスターみたいなジャケットが増え、80sポップの要素が色濃くなった。本作を聴いて思い浮かんだのは、ジョー・ジャクソンの大ヒット曲「Steppin' Out」、それから『Mystery』期のラー・バンドだったりする。


 本作はバンドキャンプでダウンロードできるアルバムだが、そこでつけられているタグを見ると、ドリーム・ウェイヴ、アウトラン、シンセ・ポップ、シンセ・ウェイヴなど。妥当だとは思う。しかし筆者は、ここにイタロ・ディスコを加えたい。本作に収められたほとんどの曲におけるリズムやベース・ライン、シンセの重ね方はイタロ・ディスコを想起させるからだ。


 それにしても、またもやイタロ・ディスコとは・・・。先日《Telefuture》から「Summer Love EP」というモロにイタロ・ディスコなシングルがリリースされたばかりだが、ソフト・メタルズの『Lenses』にしろ、ここ最近のインディー・ミュージックはこの手のサウンドが多い。ピエール瀧は、電気グルーヴのYouTubeチャンネルにて配信されている番組のなかで、ドイツにもイタロ・ディスコのような音があると語ったあと、「イタリアってドイツより見てる未来が手前」と述べているが、いわばそうした近未来的な雰囲気がいま求められているのだろうか?


 筆者からすると、去年あたりから急に浮上してきた潮流に見え、それゆえ"なぜいまイタロ・ディスコで『Nostalgia』なのか?"という疑問に対する明確な答えは持っていない。しかし、それでも言えるのは、"昔は良かった"みたいな懐古主義者のしみったれた"ノスタルジー"が本作にはなく、こうした"ノスタルジー"を抱くことで生じる情感、いわゆる"ノスタルジック"そのものに興味が向けられているということ(これは『Nostalgia』も同様で、そういった意味でこのタイトルは矛盾しているが、おそらくアイロニーだと思う)。それゆえ本作は、過去を滲ませながらも、少し遠く、それこそ"近未来"を見つめるオプティミズムが渦巻いている。


 ダフト・パンクの『Random Access Memories』は、少々痛々しい哀愁を漂わせているせいもあってなかなかコミットできなかったが(それでも惹かれてしまう魅力を内包しているが)、本作にはそんな哀愁の代わりに、チープながらもキラキラとしたポジティヴィティーが詰まっている。雑なフェード・アウトなど、もう少し曲全体のディテールに気を配ったほうがいいのでは? とツッコミたくなる部分もあるにせよ、メタリックながらも温度を感じさせる本作のシンセ・サウンドは確かに心地良く、この点だけでも多くの聴き手を惹きつけることができる。少なくとも筆者は、虜になってしまった。



(近藤真弥)




【編集部注】『Avenue Electric』はセロレクト/LAドリームズのバンドキャンプでダウンロードできます。

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011VARIOUS ARTISTS『Music Alliance Pact August2013』(The Pop Cop).jpg

 世界はつながっている。狭い。Music Alliance Pact(MAP)は世界30カ国以上の音楽サイトが集まって素晴らしい曲をフリー・コンピ配信する企画である。英ガーディアンも2013年4月まで約2年間参加し普及に協力している。主催国であるスコットランドの音楽サイトThe Pop Copにて過去のアーカイブもまとめて聴ける。


 Music Alliance Pactとは直訳すれば音楽同盟協定。世界各国の良質なインディー・ミュージックを紹介し交流を促進するための決め事。頭文字をとってMAP(地図)だ。音楽による世界旅行という意味にもとれる。異国語の不思議な響きに惹かれたり、友人の母国だから興味を持つこともあれば、その国特有の事情、地理、歴史に感動することもあるかもしれない。言葉の壁? 音楽は世界共通語だ。フィーリングをたやすく伝える。この企画で紹介された日本勢にはMoscow ClubOKLobbyLLLL、Buddy Girl And Mechanic(オウガ・ユー・アスホールの『Homely』に語りで参加)といったクッキーシーンでも以前紹介されたミュージシャンが多数含まれている。


 さて、2013年8月の紹介ミュージシャンに話を移す。世界各国の特色に加えて、全体的にサイケ、ポスト・ロック色が強い面子となっている。ではThe Pop Copでの紹介順に記していく。マスト (スコットランド)はグラスゴー出身の癖になるドリーミー・マスロック。パブロ・マローリー(アルゼンチン)はミニマル・サイケ・フォーク。イスク(オーストラリア)は伝統的なパブ・ロックとポスト・パンクの融合。モーア・デュー・アンド・リッチャー(オーストリア)は軽やかでラウンジ向けなサマー・エレクトロ。イーオンズ(カナダ)は厳しい北風のようなメロディーとリリック、それをしのぐ深い情熱を内に秘める。メリエ (チリ)はグリズリー・ベアを連想するハーモニーが美しい荘厳なポスト・ロック。シュトマート・トリオ(コロンビア)はメランコリーな響きのポスト・ロック。オーノオノでも演奏していたプレ・ビー・アン(デンマーク)は80年代にビートルズが活動していたら? というサウンド。チノ・シング(ドミニカ共和国)は打ち砕かれた希望、熱帯の幻想とレゲエ・ビート。ジョダマッサ(エクアドル)は熱い強固なラテン・ビート。パール・シーズ(イングランド)は小さな港町が生んだサイケなダーク・ロックだ。ブラッド・パビロン(エストニア)は不穏なサンプリング・ビート。アンナ・アンド・ミキ(フィンランド)は東洋の影響を感じるアコースティック・ソング。カット・オフ(ギリシャ)はアセンズのファスト・コア・バンド。ファー・トラベル・ミュージック(インド)はプログレッシブ・ロックからダブステップへと切れ目なく続く。MGMTの前座に抜擢されたサジャマ・カット(インドネシア)はローファイでシンプル、繊細で美しいメロディー。イディオット・ソングズ(アイルランド)はドストエフスキーの現代的解釈、その時代の室内楽のよう。M+A(イタリア)はフェニックス・ミーツ・ホット・チップ、遊び心溢れる洗練されたダンス・ポップ。芳川よしの(日本)は有名アーティストのリミックスも手がけるエレクトロ・プロデューサー。ティノ・エル・ピングイノ(メキシコ)は人種差別を皮肉とユーモアを混ぜてラップする。アース・マーク・ツー(オランダ)はジャコ・ガードナーの幼馴染みでゾンビーズ、シド・バレット、ニルヴァーナに影響されたネオ・サイケデリア。スペース・ビー(ペルー)はアラビア音階とヴァイオリンを用いたクラシック・サイケデリア。ラグーナ・ピアンカ(ポーランド)は青春の疾走感、透明感を宿す。中盤のピアノ・ソロは初期フジファブリックを連想させる。ピクシ-・アヴィーオ(ポルトガル)は激しいリフが美しいメロディーを徹底的に切り刻む逆上のロック。ラス・アベジャス(プエルトリコ)は夏の高速回転オールディーズ・ダンス。ステューア・デ・メア(ルーマニア)は異国情緒漂う折衷インスト。プログレ、ダブ、サイケにジプシー・ミュージックをミックス。シアター・エイト(韓国)は漢江の橋にちなんだみんなの歌。ラ・プレッサ(スペイン)は80年代エレ・ポップに3人のラップが乗るダンス・ミュージック。シャーク?(USA)はブルックリンのバンド。キャッチーなフックやグルーヴが気だるい色気あるヴォーカルと共にザクザク迫る。ラヴ・デュバン(ベネズエラ)は伝統的かつワイルドなロック・スタイルだ。


 ざっと駆け抜けてきたが、ひたすら武力、経済力を高め隣国を威嚇するより、こういった文化的交流のほうがよほど素敵でマシなことに思える。タバコジュースというバンドの松本敏将がかつて語ったように、同じ歌を歌う違う国の二人が殺しあう必要はまったくないのだから。



(森豊和)




【編集部注】本作はThe Pop Copのサイトでダウンロードできます。

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Sampha - Dual EP.jpg

 サブトラクトやジェシー・ウェア、最近だとドレイクのコラボレーターとして知られるサンファ。彼はシンガーというイメージの方が強いが、プロデューサー(トラックメイカー)としての顔も持っている。トラックメイキングは13歳の時にスタートさせているというだけあって、10年を越えるキャリアに裏打ちされた実力の持ち主でもある。最初の頃は、グライム・トラックを作って近所の友達をプロデュースしていたらしい。2010年にリリースしたEP「Sundanza」は、様々な音が入り乱れながら激しく展開していくダンサブルなトラックの方が目立つ作品だった。加えて、「Sundanza」でもヴォーカルを披露してはいるものの、翌年リリースされたサブトラクト『SBTRKT』での素晴らしい歌いっぷりに比べると、"片鱗を見せたに過ぎない"という感じだった。なので、余計に"プロデューサー"という印象の方が強く残ったのだろう。


 しかし今作では、ピアノとヴォーカル(ヴォイス・サンプリング)をキーに、機械的で無駄がないビートとシンセで作ったメロディーをループさせて、シンプルかつ歌が引き立つトラックを作っている。また、今作へと繋がるトラック・メイキングの模様は、イントロの「Demons」と4曲目に入る「Hesitant Oath」のようなデモ風のトラックから垣間見ることができる(「Hesitant Oath」はレコードだとB面のイントロに位置している)。特に「Demons」で登場する留守番電話の音声録音のような声が、「Can't Get Close」の冒頭に繋がっていく作品展開には、かなりハッとさせられた。こういう細かい仕掛けには本当に感動する。


 そしてヴォーカルは、スモーキーに歌い出したかと思えば、明るい空に向かって突き抜けていくようなファルセットを使ったりと、作品を通して表情豊か。さらに、総じて『SBTRKT』の時よりもソウルフルになっているようにも感じられる。しかしその一方で、弾き語り風のストレートなソウル「Indecision」と、エフェクトを多用した「Beneath The Tree」の様に、ヴォーカルの持つ二面性の部分もしっかりと立たせている。また、苦悩や悲哀や愛など、彼の心の内を実直に詠った詞の内容も、ソウル/R&Bに近づいたもうひとつの要因として少なからず影響しているのかもしれない。因みに、「Indecision」はエイミー・ワインハウスが亡くなった頃に書いた曲で(これも影響のひとつとしてあるかもしれない)、曲中で連呼している"Let it all work out"というフレーズは、なかなか勇気を持って一歩踏み出せない時に言い聞かせる「まじない」だそうだ。


 サンファと同系統のジャンルで、UK発の黒人プロデューサー兼シンガーは少ないような気がする。男性限定となると、グライム・アーティストの方が先に思いついてしまったり、クウェズやキング・ミダス・サウンドのロジャー・ロビンソンぐらいしか思いつかないので、ますます少ない気がしてしまう。なので、サンファの登場と活躍は非常に嬉しいし、彼を筆頭にもっとこの手のアーティストがUKから出てきて欲しいな、と願うばかり。最後に今作に関して言うと、このEPの後にしっかりとしたアルバムが続くのであれば、例え少し趣向が変わったとしても、「Dual」は真によくできたプロローグになると思う。





(松原裕海)


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