OBLIVIANS『Desperation』(In The Red)

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オブリヴィアンズ―.jpg

 着実にキャリアを重ねてきているディアハンターの素晴らしい新作もそうだったが、ガレージ・ロック的にラフに、しかし、サウンドの骨格だけ軋ませて投げ出すようなアーティストの姿勢が地表化していることが散見されてきた。それは、ソフィティケイティッドされ、やや情報過多になってしまった音楽や現実逃避的なものを求める流れへの反動か、それとも、シンプルなコードで今、言えるフレーズを野放図に伝える原点回帰の道か、00年代のリヴァイヴァルのような何かではなく、今のガレージ・ロックとはもっとアクチュアルに、混沌たる時代の空気感とある一定の磁場とシンクするような気がする。


 例えば、アイルランドの新鋭、ザ・ストライプスもリズム・アンド・ブルーズ、60年代的なクラシカルなムードをベースに若さゆえの衝動といった安直な言葉ではなく、若さが内包する背伸びした老成のような知性、視点から幾つものアーティストに敬意を払い、リファレンスしている。チャック・ベリーは元より、ドクター・フィールグッド、エディー・アンド・ザ・ホット・ロッズ、ストーンズ、ヤードバーズなどの面々。そのなかに、おそらく混ざってきても全くおかしくない、メンフィスのオブリヴィアンズの1997年以来、実に16年振りとなる新作『Desperation』がクールで、とてもいい。ほぼ、1分から2分台の曲が並び、原初期のロックン・ロールの躍動をベースに、サイケデリックなオルガンの入った曲にはドアーズの影もちらつく。勿論、デルタ・ブルーズから、70年代後半辺りのパンク、腰にくるようなグルーヴを持った曲まで、さすがホワイト・ストライプスや多くのアーティストに影響を与えてきただけの引き出しと多彩さはあるが、基本、ロックンロールの愉しさを謳歌しようとしている3人の姿が浮かんでくるのが微笑ましい。


 そもそも、オブリヴィアンズとは、90年代に活動していたグレッグ、エリック、ジャックからなるスリーピース。90年代後半からの活動休止後もソロ・ワークを進めていたのもあり、こうして3人で集まると、やはり戻ってきたという感覚はあるものの、それぞれがオブリヴィアンズという傘の下で、再び音を合わせてみよう、そんなところが強くうかがえる。クイントロンやミス・プッシーキャットの客演も花を添え、聴いていて、ただ、昂揚してしまう。


 ポール・バターフィールド・ブルース・バンド「Lovin' Cup」のカヴァーも絶妙で、30分ほどの間、ロックン・ロールの熱に飛ばされる。割れた音の端々から聴こえる咆哮、メッセージ性、少しのミスなど無関係な勢い、心地良いコーラス・ワーク。これまで、彼らの名前を知らなかったとしても、このジャケットや音は年齢や人を選ばないと思う。


 何か時代を背負っているとか新しい実験に挑むとか、そういったものや小難しさとは違う場所で、ひずんだ衝迫にただ、魅せられてみるのもいいのではないだろうか。



(松浦達)

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