K. LOCKE『The Abstract View』(Booty Tune)

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 トラックスマン 『Da Mind Of Traxman』RPブー『Legacy』など、ジューク・シーンにおける要注目アーティストのアルバムはひとまず出揃った、と思っていたのだけど、このことをまず、『The Abstract View』という必聴レベルのアルバムを届けてくれたK・ロックに謝らなければいけません。申し訳ない。


 K・ロックは、トラックスマンも所属する《TEKKDJZ》のクルーであり、数多くいる若手のなかでも最注目のアーティストとして、ジューク・ファンのあいだで抜群の人気を誇っている。なぜか日本のポップ・ソングをサンプリングした曲も作っていて、きゃりーぱみゅぱみゅの「PON PON PON」をネタにした「Wierd Connection」(※1)は、ネットを中心にかなり話題となった。


 しかし、K・ロックがネタありきのトラックを生み出しているのかといえばそうではなく、フットワーカーを踊らせるのはもちろんのこと、ホーム・リスニングに適したメロウな側面もあるトラック群は、ジューク入門にうってつけな親しみやすさがある。ジュークと聞くと、変則的なリズム・パターンを持ち、特に4つ打ちに馴れた者からするといまだに敬遠されがちな音楽だが、ソウルフルかつディープな本作は、そうした者たちも引き込めるキャッチーさが際立っている。この側面はK・ロックが持つ最大の武器であり、トラックスマンやRPブーといった、日本でも高い認知度を誇るトラックメイカーとの明確な違いである。


 また、本作を聴いていて興味深いのは、ジュークでありながらも、ヒップホップの要素が随所で顔を覗かせる点だ。例えばトラックスマンは、「毎日のように(J・)ディラのアルバムのサンプリングネタと抜き方、そしてフリップやチョップの方法をマネしまくった」(※2)と語るほどにヒップホップの影響を受け、それはトラックにも反映されているが、K・ロックの場合、その影響がより色濃く出ている。さらに「Want A Be」は、サンプリング・ヴォイスをヴォーカリストによる歌に変えても、ひとつの良質なポップ・ソングとして成立する構成になっており、今後K・ロックが歌モノを作っても不思議ではないと思わせ、いわばポップ・ソングとしての側面を覗かせる。K・ロックはクリス・マッコイという名義でヒップホップを作っているが、このことも本作におけるヒップホップ的要素や歌モノ要素と関係しているかもしれない。全曲にラッパーとヴォーカリストをフィーチャーしたK・ロックのアルバム、というのもぜひ聴いてみたい。



(近藤真弥)




※1 : 現在はK・ロックのサウンドクラウドから削除されていますが、《Radio-Alternator》のサイトにアップされているミックスで聴くことができます。


※2 : ミュージック・マガジン2012年7月号掲載 トラックスマンのインタヴューより引用。

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