IKONIKA『Aerotropolis』(Hyperdub / Beat)

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 コード9のバックアップもあり、デビュー当初から大きな注目を集めてきたアイコニカ。おそらく、彼女のことをベース・ミュージック・シーンのアーティストと見ている者も多くいるだろう。まあ、それは間違いではないし、実際彼女のディスコグラフィーには、ダブステップを下地にしたトラックが多く並んでいる。しかし、本作『Aerotropolis』は、アイコニカ史上もっともベース・ミュージックの要素が減退した作品であり、より高い折衷性と音楽的彩度を獲得した飛躍作だ。


 まず、本作において際立っているのは、初期のシカゴ・ハウスを想起させる荒々しくもディープなグルーヴ。それは「Manchego」などで顕著に表れており、しかもソフト・メタルズ《100% Silk》周辺の、いわゆるインディー・ミュージック側から解釈したハウスに通じるものだ。


 また、ジェシー・ランザをフィーチャーした「Beach Mode(Keep It Simple)」は、グライムスやマリア・ミネルヴァなどのベッドルーム・ポップに近い質感を持っている。実を言うと、こうした質感はアルバム全体にわたって見られるもので、アイコニカの変化をわかりやすく示していると思う。


 そういった意味で本作は、コード9やブリアルよりも、アイタルディスクロージャーといった、ダンスフロアとライヴ・ハウスを跨ぐアーティストたちの領域に近いアルバムだ。おそらく、本作においてアイコニカが試みたのは、ダンスフロアに軸足を置きつつも、自身の音楽性をさらに拡げ、ポップ・ソングとも比肩するキャッチーさを獲得することではないだろうか? その試みは同時に、すべての音楽が特定の場所に閉じ込められることなく、あらゆる場所で鳴り響き届く可能性がある現在の面白さを浮かび上がらせている。


 そんな現在の面白さを内包する本作は図らずも、いまだセクショナリズム的に音楽と戯れる狭隘な音楽リスナーの想像力に挑むような作品となっている。



(近藤真弥)

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