DESAPARECIDOS「Te Amo Camila Vallejo / The Underground Man」(Self Released)

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 再結成したデサパレシドスの3rdシングル「Te Amo Camila Vallejo / The Underground Man」がリリースされた! デサパレシドスは、ブライト・アイズのコナー・オバーストが中心になって2001年に結成されたポスト・ハードコア・バンド。初期のブライト・アイズにあったコナーの震えるような叫びとハスカー・デュやリプレイスメンツのようなアメリカン・ハードコア/ガレージ・パンクが渾然一体になったエモいサウンドが最高にカッコ良かった。2002年には、《Saddle Creek》から1stアルバム『Read Music / Speak Spanish』をリリースしている。


 ちなみに、バンド名である「Desaparecidos」を(アルバム・タイトルに従って)スペイン語の自動翻訳機にぶち込むと...「missing person; classification for soldiers did not return from the battlefield and their status is unknown」って出てくる。「Desaparecidos=The Disappeared:戦闘中の行方不明者」という意味。バンドのスタンスが伝わってくる。彼らは1stアルバムのリリース後、小規模なツアーに出たけれども、その年にあっさりと解散。コナー・オバーストはブライト・アイズへ、メンバーもそれぞれのバンド活動へと戻っていった。


 解散前のデサパレシドスの活動期は、コナー・オバーストがブライト・アイズとして『Fevers And Mirrors』(2000年)と『Lifted Or The Story Is In The Soil, Keep Your Ear To The Ground 』(2002年)をリリースしていた中間にあたる。宅録から始まったブライト・アイズが、アメリカン・フォーク・ミュージックを2000年代の声にアップデートして、『Lifted』とそれに続く『I'm Wide Awake, It's Morning』(2005年)でボブ・ディランやブルース・スプリングスティーンと並び称されるようになるちょっと前。その頃、アメリカはブッシュ政権の真っ只中だった。ブライト・アイズは、2004年にケリー候補とブッシュがぶつかるアメリカ大統領選挙への投票を呼びかける"Vote For Change"ツアーにも参加。R.E.M.やボス、パール・ジャムらと一緒にステージに上がっている。そして、シングル「Lua」と「Take It Easy(Love Nothing)」がナショナル・チャートのトップを飾り、ブライト・アイズの名は揺らぎないものとなる。...けれども、その大統領選ではブッシュが勝利したことはご存知のとおり。オバマの登場までには、それから4年を要することになった。


 その後もコナー・オバーストは、2枚のソロ名義のアルバム・リリースやブライト・アイズとしての活動を精力的に継続。ブライト・アイズは、2011年の8thアルバム『The People's Key』で休止したみたいだけれども...、翌年には正式にデサパレシドスの再結成がアナウンスされ、Webサイトも新たに立ち上げられた。そして、2012年8月に約10年ぶりとなる復活シングル「MariKKKopa / Backsell」をリリース。「MariKKKopa」は、アリゾナ州「Maricopa(マリコパ郡)」のスペルをKKKに置き換えて、ヒスパニック系の移民問題(アリゾナ州では新移民法が成立)を取り上げながら、人種差別を糾弾するパンク・ソング。そう、デサパレシドスは以前にも増して明確な意思を持つ「パンク・バンド」として甦った。


 そして、この3rdシングルのタイトル「Te Amo Camila Vallejo」は、「カミーラ・バジェーホが好き!」という意味。カミーラは、2011年に勃発したチリ学生運動のリーダーだった女性。政治活動には不釣り合いなほどの美人で、多くのメディアを賑わせている人物とのこと(ジャケ写に注目!)。ひとつひとつの言葉やアメリカと南米の政治情勢などは、日本に住んでいる僕たちには伝わりにくいことかもしれない。けれども、ブライト・アイズの(現時点での)ラスト・アルバムを『The People's Key』=「民衆のキー(音調)」と名付けて、音楽の力による調和を歌ったコナー・オバーストが2013年の今、こんなにも怒り狂っている。チープでやたら騒々しいシンセと焦燥感に満ちたギター・リフ。何かに急かされるようなサウンドなのに、アンセミックにすら聞こえる。コーラスの一節が、痛切に響く。


《Oh Camila / You Put A Fire In My Heart / I Don't Know What's Going To Happen / But I Want To Do My Part》


「きみは僕の心に炎を灯してくれた。何が起こるかわからないけれど、僕は僕のやるべきことをやろうと思う」ー 何かのきっかけとなる行動があり、それを歌うパンク・ソングがある。怒るべきこと、声を上げること。そして、やるべきこと。今の日本はどうだろう?



(犬飼一郎)


【編集部注】デサパレシドスのHPから購入できます。


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