BETAMAXX『Sophisticated Technology』(Telefuture)

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 80sリヴァイヴァルが起きている! と鼻息を荒くして語っても、大仰に驚く人はいないでしょう。これまでにも80sリヴァイヴァルは何度か起きているし、"何をいまさら"なんて具合に、80sというキーワードに食傷気味な方もいるかもしれない。


 しかし、それでも80年代の音楽に惹かれ、その影響を反映させた作品は今でも数多く生まれている。流行には目もくれず、ひたすら"好き"を追求するその姿、筆者の目にはとても面白く映ります。もちろん揶揄などではなく、素直に面白いと思えるのです。何より"好き"をモチベーションに生み出された音楽は、コンセプトや時代性を一枚一枚剥ぎ取られても、時の流れに耐えながら確実に残っていく。そして、その残った音楽をリアルタイムではない者が引き継ぎ、時には音を鳴らし、作品として残す。そうした繰り返しの末、本作『Sophisticated Technology』のようなアルバムが生まれたのは、とてもロマンティックであり、文化の面白さを示していると思います。


 かつてソニーが販売していた家庭用ヴィデオ・テープ・レコーダーの名前を掲げるベータマックスは(こちらは"X"がひとつ多いけど)、アメリカはピッツバーグ出身のアーティスト。そんなベータマックスが鳴らすサウンドなんですが、モロに80年代エレ・ポップ、それも『Speak & Spell』期のデペッシュ・モードに通じるシンセ・サウンドを基調としている。そこにイタロ・ディスコのいなたい近未来的サウンドスケープとベース・ライン、さらにはオールド・スクール・エレクトロやハウス・ビートも顔を覗かせる。ひとつの要素で満足しない折衷的感性は、やはり2013年の作品であるということか。


 もうひとつ興味深いのは、バンドキャンプでダウンロードできる本作のタグに、昨今盛り上がりを見せる"シンセ・ウェイヴ"の名があること。多くの者はシンセ・ウェイヴと聞けばおそらく、《Minimal Wave》やそのサブ・レーベル《Cititrax》がリイシューしている、80年代ニュー・ウェイヴのエクスペリメンタルな作品群を思い浮かべるのだろう。まあ、本作の1曲目「Breakthrough」は、そのリイシュー群に通じるドローンの要素を見いだせなくもない。しかし、基本的にダンサブルなシンセ・サウンドを終始鳴らす本作は、やはりエレ・ポップと言ったほうが、少なくとも便宜的な面では妥当でしょう。


 ただ、本作のサウンドがシンセ・ウェイヴ・ブームを通過したうえで生まれたものならば、それはそれで興味深い。チープさを逆手に取った秀逸なジャケット・デザインは、80年代ディスコのレコード・ジャケットでよく見られる色使いを想起させながらも、どこか宇宙を見つめているピュアな開放感に覆われたサウンドを聴いてしまうと、サイボトロン「Enter」やモデル500「Classics」のジャケット・デザイン、いわゆるデトロイト・テクノの系譜も見えてくる。もしくは、ドリーミーなカーテンを纏っていたチルウェイヴの残滓が、80sの皮をかぶって新たな白昼夢を紡ぎだしたのか・・・。いろいろ想像が尽きない。



(近藤真弥)



【編集部注】『Sophisticated Technology』は《Telefuture》のバンドキャンプでダウンロードできます。

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