パブリック・イメージ・リミテッド at 名古屋クラブダイアモンドホール 2013.4.2を観て

久々にザ・キンク・コントラヴァーシーの更新でございます。本当はもっと頻繁に更新したかったのですが、諸事情が重なりまして、ほぼ休止状態になっていました。申し訳ございません・・・。しかし、現在は投稿の受けつけを再開しましたので、ぜひ送っていただければと思います。詳しくはこちらのニュース記事をご覧ください。


さて、今回掲載するのは、森豊和さんの原稿です。今年4月におこなわれたパブリック・イメージ・リミテッドの来日公演について、勢いのある言葉で語ってくれました。かつてジョン・ライドンは、セックス・ピストルズのジョニー・ロットンとして《No Future》(「God Save The Queen」)と叫び、PiLのアルバム『That What Is Not』に収められた「Acid Drops」では、そんな自分の過去を諧謔的に皮肉るような行為に及んでいます(ピストルズの代表曲「God Save The Queen」をサンプリングしている)。


こうしたことをふまえて森さんの文章を読むと、より面白い観点を見つけられるかも。もちろん文章自体も興味深いものですが。「時代が否定に覆われ尽くす前にYESを復権させなければいけない」という一節には、グッときました。



(近藤真弥)




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 パブリック・イメージ・リミテッド(以後「PiL」と表記)名古屋公演終演後、年配の客が口をそろえて「初期の勢いが感じられる」と興奮して語り合っていた。それがすべてを物語っていたと思う。


 痙攣する声、ミニマルなドラム、呪文のような歌が会場に響く。重厚なギターとベースが吐き出す音の塊は光の波動とともに広がっていく。ジョン・ライドンは両手を挙げて人々を煽動し続けていた。2曲目には白い上着を脱いで赤いシャツ1枚で身軽になる。恍惚の表情を浮かべ、犬のように叫び、鶏のように翼をふる。「いないいないばあ」。まるでいたずらっ子のようだ。全盛期のPiLなんて私は知らない。しかし彼らは今なお健在だ。硬質なギターが輝き、重戦車のように唸るベースに、機械的かつ熱いドラミングが果てしなく続いていく。ジョン・ライドンの口から悲痛な叫びが漏れる。そのせつな私の目にはっきりと見えたのは「こめかみに突き刺すピストル」。彼は笑いながら死ぬのではないか。そう信じかけたとき、ジョンは指揮者のように両手を下ろし曲が終わった。


 内にたまりたまって吐き出すように炸裂するパフォーマンス。はるか時空の彼方から聞こえてくるようで未来への逆説的な希望に満ちている。ときに壮大な旅路を示唆する。「俺達は決して降伏しやしない」。ジョンは繰り返しそう告げる。果たして誰のために。私たちのためなのか、彼自身のためなのか、そもそも道化なのか。満開のロマンスの花をたむけて(「Flowers Of Romance」)投げキッスする。全力で笑って手拍子。両手を挙げコール・アンド・レスポンスを募る。全身で語る。それは愛なのか皮肉なのか。その解釈は我々一人一人に委ねられている。なんでもいい。とにかく一緒に歌いたくなった。ひたいに両拳をあて咆吼するジョン・ライドン。それを見て信じられない声が出る。みな踊り狂う狂乱パーティーになだれ込む。知らない若者が私のテーブルから酒を間違えて持って行こうとする。もちろん彼も笑顔だし私も笑顔のはずだ。


 「This Is Not A Love Song」が演奏される。80年代にラジオで流れていたときとは意味合いも時代の空気も違う。「これは愛の歌だ」とジョンは繰り返し叫び続ける。NOTが付いていたかもしれない。でも私の耳にはLOVEしか聴こえなかった。ひたすら、ハローを繰り返す。我々に呼びかける。否定の時代は終わった。いや、時代が否定に覆われ尽くす前にYESを復権させなければいけない。本編ラストの「Public Image」でついに暴動が起きる。最前から3人が団子状になって高速で移動する。ねずみ同士の喧嘩みたいだ。ねずみと違うのは重さと加速度の掛け算。テーブルに激突し置いていた私の傘が折れた。スタッフが制止する。歌には人を動かす力がある。でも乱闘はそぐわない。実際、彼らの小競り合いはすぐ終わった。


 民族音楽のような溜めとリズム、奇妙なユーモアを宿すメロディー、ジャンルを超えてただ人を踊らせる歌、音の恵みのシャワー、体も心も動く。見上げればおどけて笑い謳い上げるキリストがいる。彼は神なのか、悪魔なのか、我々の代弁者なのか、勝手な悪童なのか。「俺の完璧なショーをくれてやる。だがそれもお前らしだいだ。全ては相対的で白は黒、黒は白になる。俺達は革命でかつ革命ではない。エンターティメントであらゆるボアダム。俺はお前達を知らないし、お前達も俺を知らない」。私にはそう聞こえた。


 PiLは2009年再結成し20年ぶりの新作『This Is PiL』をひっさげツアーを続けている。金儲けのためなのか、嘘吹きながら現在の世界に欠けた何かを提示したいのか、わからない。現在のジョン・ライドンは神を演じている。かつての彼の役割を再現しているのかもしれない。PiLを再現する時点でそれはPiLではない。それはわかっている。それでもその夜のショーは素晴らしかった。


 終演2日後に英語でライヴレポートを書きPiL公式サイトに送り、2日後にライヴレポートページに私の拙い英文を掲載してくれた。これはその内容を日本語訳し加筆修正したものです。このページには現在も各国のライヴレポート、ライヴ写真、さらにはライヴ映像まで掲載され続けている。




(森豊和)

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