SUN KIL MOON & THE ALBUM LEAF『Perils From The Sea』(Caldo Verde / P-Vine)

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 スロウコアを代表するレッド・ハウス・ペインターズの結成からキャリアをスタートし、15年近くにわたり活動を続けているサン・キル・ムーンことマーク・コズレックと、ポスト・ロックの雛型といえるサウンドを確立させたトリステザに所属し、アルバム・リーフとして活動するジミー・ラヴェル。歩みがそれぞれひとつのシーンを生み出したと言っても過言ではない、そんなふたりのコラボレーション・アルバムが今作である。


 このシンガーソングライターとエレクトロニカ・アーティストという組み合わせを見るに、今年に入り活動を再開したポスタル・サーヴィスを連想し、10周年記念盤もリリースされた00年代を代表する名盤『Give Up』のようなケミストリーを期待する人も多いのではないだろうか。それは冒頭の「What Happened To My Brother」でひとまず裏切られる。アルバム・リーフの特長でもある、温かみのある電子音は奥に隠れ、印象に残るのは無機質な反復音。思わず一抹の不安が胸をよぎる。マーク・コズレックの、哀愁を帯びた歌声と並んで大きな魅力でもあるギターが排されているのも残念ではあった。しかし、2曲目以降を聴き進めていくうちに不安は杞憂との思いが強まっていき、教会音楽のようなイントロから始まる5曲目の「Ceiling Gazing」でそれは完全に払拭される。マーク・コズレックのギターを代弁するかのような、温度感を伴った電子音がギターに代わり歌声を引き立てることに成功している。ラストの「Somehow The Wonder Of Life Prevails」では、ともすれば手探りとも思えるような1曲目から一転、この作品を2人で生み出せたことへの喜びすら感じさせる、芳醇さに満ちている音が展開されている(この曲のみピーター・ブロデリックがストリングスで参加している)。


 歌詞は、前作までのサン・キル・ムーン作品のそのまま延長線上にある、曲毎にとてもプライベートで具体的な物語が構成されている。歌のメロディーも、そのままギターをつけてサン・キル・ムーンとしてもおかしくないもので、ジミー・ラヴェルがこれを如何に生かしたトラックを産み出せるか、という、各々の役割を弁えたうえでのコラボレーションの形であったようだ。ただ個人的には、マーク・コズレックのギターが導入されているのが「Caroline」「Here Come More Perils From The Sea」の2曲のみであり、その2曲のギターと電子音の絡みがやはり何より美しく、アルバムのなかでも白眉と思えてならず、これがもし全編に渡りバック・トラックを2人でもって手がけていたなら・・・と想像が膨らみつつ、少し残念に思えてしまったところでもある。


 ポスタル・サーヴィスの『Give Up』が2人のケミストリーが結晶化されたような作品だとするならば、『Perils From The Sea』はコラボレーションの過程ごと克明に収めた、まるで久しぶりに会った友人同士がぎこちなさから打ち解けてゆき、別れの心地良い名残惜しさまで見せてくれる、そんな作品である。そして出来るならば、再度の邂逅が訪れ、また2人を目撃したいと願う。



(藤田聡)

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