SMITH WESTERNS『Soft Will』(Mom & Pop)

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 彼らはまだ高校生のときにファースト・アルバムをリリースしたからか、彼らの音楽のイノセントな部分にはまだ誰も触れられずにいる。つまり、社会との軋轢や、人間関係に起因するストレスを、この音楽から感じ取ることはできない。いまは自分が住んでいる世界と、ほかの誰かが住んでいる世界をつい混同しがちだが、もちろん、全員の見ている景色はまったく異なる。ましてや、今作のように1曲目から早速60年代のセピア色の(いまだから夢のようだと思える)世界を連想させる「3AM Spiritual」のような曲が飛び出してくれば、彼らがいま生きている世界とはどういうものなんだろう、という妄想をしないわけにはいかない。


 彼らのサード・アルバム『Soft Will』は、彼らが大人になる過程でハイになって、その向こう見ずな行動によって過去を台無しにしてしまう切なさみたいなものがよく表れている傑作だ。たとえば、「Only Natural」の重い低音のギターと、ふわふわと宙に浮かぶ光の欠片のようなキーボードの対比。ティーンならではの倦怠ではなく、ここには一人前になった青年の悲哀があるように思えるのだ。メロディーもすべて素晴らしい。変な言い方だけど、まるで"何十年も前に一世を風靡した人気ポップ・バンド"の盤を聴いているような気持ちにさせてくれる。このトリップ感が、ほかの凡庸なポップ・バンドにはない。


 僕は彼らのことを勝手にハンソンのようなバンドだと思っている。彼らの生きていく過程そのものがバンドのサウンドを決定づけるドラマであり、それが唯一、リアルなものだ。一際ポップで明るい「Varsity」で締めくくられる構成も素晴らしい。人生はそういう風であってほしい、というメンバーのささやかな願いが感じられる。



(長畑宏明)

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