SECTION 25『Love & Hate』(Factory Benelux / diskunion)

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 音楽、いや、この世にあるすべての"表現"に言えることだけど、世に解き放たれてすぐには理解されなくても、時を経て多くの人に注目され、崇められることはよくある。


 例えばヴェルヴェット・アンダーグラウンドがそうだし、あとはカルト的扱いだったジョイ・ディヴィジョンの名が、2000年代に入ってから音楽雑誌などで目にする機会が増えたり(そういえば、ポスト・パンク・リヴァイヴァルなんて現象もありましたね)。だからこそ、"表現"を"残す"という行為は尊いのかもしれない。


 もちろん、すぐさま広がっていく即効性の高い"表現"を生みだせる才能も素晴らしい。しかし、即効性はなくとも、自分のやりたいようにやった"表現"がまるで時限装置の如く後世で爆発するのも、"残す"という行為が持つ可能性であり、ロマンなのだ。


 そしてセクション25もまた、そのロマンに取り憑かれたバンドなんだと思う。当然バンドとしてはもっと売れたかったろうし、多くの人に聴いてもらいたいのだろうけど。だが、2004年にジェニー・キャシディー、2010年にはラリー・キャシディーを亡くしながらも、このふたりのあいだに生まれた娘であるべサニー・キャシディーをヴォーカルに迎え、今年2月には『Dark Light』という名の新作を発表するその執念とでも言おうか、必死にしがみつこうとする意地を感じてしまうのは気のせいだろうか?


 "金のためでしょ?"なんて思う人もいるだろう(まあ、それもあるでしょう)。それでも、90年代はほぼ音沙汰なしだったとはいえ、こうして長く活動しながら作品を発表しつづけることの大変さを考えたら、光を当てたくなるのが心情なのです。


 というわけで、本稿の主役『Love & Hate』に話を移します。もしかすると、いま"えっ?"と思った方もいるかもしれません。ええ、それもわかります。なぜなら本作は、筆者が生まれた年の88年にリリースされた4thアルバムなのですから。でも本作は、先頃リイシューされた最新盤。ジャケットには新しいデザインを採用し、リマスタリングも施されている。ボーナス・トラックには、バーナード・サムナー(ニュー・オーダー)とドナルド・ジョンソン(ア・サーテン・レイシオ)がプロデュースした「Crazy Wisdom」や、収録曲の別ミックスが収められている。


 肝心の内容は、驚くほど現在にしっくりくるサウンドが詰まっている。《100% Silk》や《L.I.E.S.》周辺のパレアリックな折衷感覚にコミットできる者なら、すぐにでも気に入るはずだ。デビュー当初は、ジョイ・ディヴィジョンよりも暗いと言われたダークなポスト・パンク・サウンドが印象的だったセクション25だが、ラリーとジェニーがセルフ・プロデュースを務めた本作では、抜けの良いあざやかなシンセ・ポップを鳴らしている。最近のバンドから例を挙げれば、キープ・シェリー・イン・アテネと近いかもしれない。ビート感覚は、ダブステップを通過したキープ・シェリー・イン・アテネと比べればさすがに時代を感じてしまうが、多彩な音楽的要素が入り乱れる作風は、見事なまでに"今"と共振している。


 なので、過去の作品だからと食わず嫌いせずに、まずは聴いてみてください。あらゆる要素を混在させた音楽が当たりまえとなった今、たまにはそうした現況の礎のひとつとなったバンドに触れてみるのも、大事だと思います。



(近藤真弥)



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