久保憲司(著) 鈴木喜之(監修)『ダンス・ドラッグ・ロックンロール2 "写真で見る"もうひとつの音楽史』書籍(音楽出版社)

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 昨年出版された『ダンス・ドラッグ・ロックンロール 誰も知らなかった音楽史』の第2弾が早くも登場! この『ダンス・ドラッグ・ロックンロール』シリーズは、いわばクボケンさんのライヴ盤。渋谷のLo-Piというおしゃれなバーで開催されている"クボケン's Rock Bar"というトーク・ショーでの語りをメインに、今回は阿佐ヶ谷ロフトAや東大構内の学生食堂での熱弁(←「本書あとがき」より)も含めて1冊にまとめたもの。こんなに早く2冊目が出るとは思っていなかったので、びっくりしたしとても嬉しかった。


 1作目の『誰も知らなかった音楽史』は、クボケンさんが撮影したリアム、ストーン・ローゼズ、プライマル・スクリームのボビー、そしてマイブラのモノトーンのポートレイトに、オレンジ色の"ドラッグ"というキーワードが躍る表紙がやたら刺激的。内容はもちろん、ロックとダンス・ミュージック、そしてヒップホップがどれだけドラッグと深い関係を持っているかについて描かれている。今まで(特に日本では)あまり語られてこなかったけれども、いつの時代もユース・カルチャーは、ドラッグと切り離すことはできなかったという事実。音楽シーン(カルチャー全体と言い換えてもいい)が移り変わる瞬間にドラッグが果たしてきた役割は、日本に暮らす僕たちが想像するよりも遥かに大きい。決してシリアスになりすぎず、かと言って誰かの受け売りでもない。クボケンさんが80年代に渡英してから今日まで、実際に体験したり感じてきたことを「クボケンさん自身の視点と言葉」で綴っていること、それが何よりもリアルだ。70年代後半のパンク/ポスト・パンクからセカンド・サマー・オブ・ラヴ、そして現在までのポピュラー音楽史としても楽しめる。なかでも、特に印象的だったのは・・・。おっと、僕が喋りすぎちゃいけないね。まだ読んでいない人には、ぜひ手に取ってもらいたい1冊だから。


 そして、第2弾となるこの『"写真で見る"もうひとつの音楽史』は、またもや表紙がカッコいい。グリーンのフォントと帯が目印。ジェネシス・P・オリッジ(スロッビング・グリッスル/サイキックTVのリーダー。「性差を超える人々」と題された章で大きくフィーチャーされている)からスティーヴ・アルビニ、そしてクリストファー・オウエンスまでがコラージュされている。このデザインからもうかがえるように、今回はクボケンさんが撮り続けてきたバンド/ミュージシャンの写真が多め(特にエイリアン・セックス・フィーンドの面構えは必見!)で、ドラッグ関連のあれこれはもちろん、ロックの歴史を彩ってきた様々なムーヴメントとそれを支えてきた人々、そして社会的にはマイノリティーとされてきた存在にまでしっかりと目を向ける。本書のまえがきから、クボケンさん自身の言葉を引用したい。


《第1弾を僕がいちばん愛した80年代~90年代から今のロックへの流れを説明した本とするなら、この本は、そうした音楽が生まれた背景、ロックの原風景、50年代、ビートルズ、ウッドストック、パンク、そしてまたもう一度現在のロックまで取り囲んだ本になったと自負しています。》


 僕が行ったあるトーク・ショーでクボケンさんは、本書にも収められているウッドストックにまつわるエピソードを紹介してくれた。ドキュメンタリー映画『ウッドストック 愛と平和と音楽の3日間』をみんなで観ながら。キャンド・ヒートの演奏中、メンバーにタバコをたかるファンの姿。一時停止と巻き戻しをくり返しながら、「こいつは、間違いなくクスリでトンでるで!」だとか「ステージに上がってきてもOKなんて、今なら絶対にあり得へん!」だとか、おもしろ可笑しく突っ込む。会場は何度も爆笑に包まれる。また、別の回では、バズコックスやトム・ロビンソン・バンドを紹介しながら、パンク/ポスト・パンク・シーンでのゲイの存在について熱く語ってくれた。「反逆的/暴力的」とステレオ・タイプに受け止められがちなパンクのなかで、セクシャリティーを超えたラヴ・ソングを歌う。その行為こそが、パンクのもうひとつの側面であること。


 音楽を体験する、という意味でクボケンさんのトーク・ショーはライヴだ。音楽雑誌をめくっても、インターネットで検索しても見つからないエピソードの数々。音楽を通して、人を深く知ってしまう。音楽を"愛して"しまった人なら、きっと経験したことがあることだと思う。結局は、どう生きるかとか、どう楽しむかってこと。『ダンス・ドラッグ・ロックンロール』は、そのことを僕たちに知らせてくれる。3コードのシンプルなパンク・ソングのように。真夜中に鳴り響く4つ打ちのダンス・ミュージックのように。



(犬飼一郎)

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